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衛澤のどーでもよさげ。
by 衛澤 創
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■てんさい。
それから暫くして、ようやく「自分の好みの曲調と調声」というものが判りはじめた頃にこの曲と「千年の独奏歌」(sm3122624)を知り、「千年〜」も好きだけどこっちのがもっと好きかな、と思っていたという記憶が薄らとある。

両曲の決定的な違いは何処にあったか、というと、誤解を怖れずに言うなら「歌謡曲っぽさ」だったと私は考えている。
「千年の独奏歌」からはプロの匂いがした。細部に施す遊びや趣向がプロの仕事で、編曲や仕上げ方はヒットさせることを狙った「歌謡曲」の様相で、華やかですらある。なるほどこれは誰からも好かれてさっさと殿堂入りするだろうと思えた。

対して「そよぐ真昼の歌」にはその華やかさというものはおよそなかったが、一日中プレイヤのリピート機能に任せて際限なく繰り返して聴いていても飽きもせず厭にもならない、味わい深い曲であり、KAITOの南方風の謡い方となめらかな声は心地よかった。長い時間聴いて疲れるどころか、じわじわと味が出てくるのだ。ほほうと感心する私が、氏の曲が「スルメ」だと言われていることを知るのは、もう少し後のことである。
多くの消費者に媚びず、しかし丁寧なつくりの「そよぐ…」の方が私には好もしかったのである。

■そのPにハマったきっかけ、理由は?
きっかけは「わだつみ」(sm2768013)。

【ニコニコ動画】オリジナル曲「わだつみ」 KAITO

毎日毎日「KAITO」タグを放浪して「KAITOの歌」を何百曲と聴いて、だいたい「KAITOの声」と「その声でうたう詞の内容や曲調」の傾向が判ってきた頃のこと。それまで聴いたものの何れとも、だいたい判った傾向とも、まったく違うKAITOに出会った。それが「わだつみ」だった。

張りのある太い声、よどみない発音・滑舌、謡曲や演歌の技法が混じった歌唱、太鼓の低い音が取る海洋を表しているのだろうリズム、鳴ってほしいところで盛大に鳴る銅鑼(シンバル)、それに何だ、この詞の語彙の豊かさと語選の的確さ、仕上がりのうつくしさは!……それまで出会ったことのないKAITO=わだつみさまの大きな逞しい手で喉首掴み上げられたような気分だった。それは一視聴者、というよりも、つくり手の端くれとして感じた衝撃であり畏怖であったと言える。
すごい曲だ、誰がつくったんだ!……私はこのときはじめて「誰がつくったのか」を確かめ、「わんだらP」というP名を知ったのである。

P名を知れば当然マイリストを覗くことになるのだが、覗いてみて判ったのは「ああ、『wanderer』や『そよぐ真昼の歌』の人か」ということだった。ほかにも氏の曲は幾つか聴いたことはあって、「わだつみ」がはじめての出会いではなかった。
そうして氏の曲をすべて一ト通り聴くことになるのだがそれを通して、作品に共通してつくりが丁寧であること、一聴して直ぐ判るほど浅い作品はつくらないこと、言葉の研ぎ方が非凡であることなどが判り、職人気質の制作姿勢が感じられて、私はこの師匠に一生着いて行こうと思ったのだった。

■あなた自身はそのPの作品の中で、どれが1番好きですか?
「1番好き」ということはただ一曲きりを択ばなくてはならないということなのだろうが、それは無理というものだ。だが、何とかできる範囲で絞り込んでみよう。

「コンドル」(sm4916562)
【ニコニコ動画】オリジナル曲「コンドル」 KAITO
フォルクローレ風変拍子、不思議なコーラス、落ち着きと確固たるものをはらみ凛としたヴォーカルの声、平易な言葉を択びながら多くの人が言おうとしてなかなか言えぬことを表す詞、心臓をわし掴みにされる思いだ。
この曲には思うところ多く、題材に取らせて頂いて物語を書いてみたいという気持ちまで、書く書かないは別にして、持っている。

「日照雨」(sm7908362)
【ニコニコ動画】オリジナル曲「日照雨・改」 KAITO

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12月14日(月)
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