ID:38229
衛澤のどーでもよさげ。
by 衛澤 創
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■観た…。
何にせよ、原作文庫版第一巻だけを読んで映画を観ただけでは何もかもが未消化だし、それではあんまり気持ちが悪いので、この後どれくらい掛かるか判りませんが、原作残り三巻を読みたいと思います。
「ローレライ・システムの真実」が結構衝撃的だったので、それを活かした、読んでいてつらくてたまらなそうな物語が展開されているのだろうことを予想しつつ。
以下、ネタバレ含む感想(ツッコミとも言う)をあぶり出しで書いておきます。映画も原作もこれから、という方はお読みにならない方が無難かと思います。
先ずね、映画はちょっと不親切。
潜水艦の航行システムは先ずソナー(水測=聴音)に頼るしかないということ、だから水測員からの魚雷発射管やバラストタンク注水音報告が重要になってくること、「コーン、コーン」というアクティブソナーの音が敵艦に自艦の位置を知られてしまった証拠となること、だからこそ「ローレライ・システム」が重要な戦略物資になるということ、「伊507」が潜水艦としては異形であること、「伊507」は独逸軍から接収した戦利潜水艦であるため急拵えで集められた乗員は操艦の仕方が判っていないこと、潜水艦の浮上及び潜航はバラストタンクの注水及び排水(ブロー)によって行なわれること……こういった潜水艦の基礎智識がないままに映画を観ても「何だかよく判らん」ということになるのは必至でしょう。
これ等を知っていることがこの物語を読み解くための大前提となるはずなのに、それを知らしめるための時間や描写が費やされていないのね。あんまりにも不親切でしょう。これ等を知らない人が観てもまったくつまらないと思う。
素人目に見ても帝国海軍の軍紀が甘過ぎ。妻夫木聡くん演じる折笠一等兵曹は何度も命令不服従を繰り返している(少佐艦長に対してさえ口答えしている! 考えられん)のに懲罰がトイレ掃除で済んでいるし(帝国海軍の規律の厳しさを舐めたらいかん。鉄拳制裁の上、営倉に入れられても文句は言えないくらいの罪を犯している)、どんなことがあっても、どんな間違った命令が下されたとしても艦の中では艦長の言うことが至上の絶対でしょう。階級も少佐と最上位なのだし。
あれじゃ現在の海上自衛隊よりもずーっと微温いわ。帝国海軍の規律はあんなものじゃなかったはず。
やけに軍服がきれいなのが気になった。終戦間近の疲弊した海軍のドンガメ(潜水艦)乗りの制服(作業服)が、ぜんぜんくたびれていないの。それも不自然でしょう、陸の制服組でもあるまいし。しかも潜水艦乗務よ? 「スマートで目先が利いて几帳面、負けじ魂これぞ船乗り」という海軍さんの気質が根強いにしても(これは現在の海上自衛隊にも伝統として伝わっています)、戦況と特殊任務と鬼のよーに狭い艦内勤務であることを考えると絹見艦長はともかく木崎先任大尉以下の乗組員はもっと薄汚れた、くたびれた制服を着ていて然りだと思う。
この辺りは衣装スタッフのウェザリングの仕方が甘かったのだと思います。
だいたい、「伊507」潜水艦は潜水艦として異形のものであるということ、その異形は「ローレライ・システム」を搭載しているからではなく、艦橋麓に突き出している二門の主砲に主たる理由があること、潜水艦に洋上艦よりも大きな大砲が搭載されていることが戦闘艦として、潜水艦としてどのような意味を持つのか、もっと観客に報せる描写は必要だったでしょう。
何より、「ローレライ・システム」の謎のキイを握る「フリッツ少尉」の存在が映画ではまったく省かれてしまっていました。だから、いきなりパウラに登場されても何だか困っちゃうではありませんか。少しだけど原作を読んでいたから、幼き日のパウラが見た実験で生命を落とした男の子が兄のフリッツであることは判ったけれど、読んでない人、上映前にパンフレットを読まなかった人は置いてきぼりですか。
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03月20日(日)
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