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ドラマ!ドラマ!ドラマ!
by もっちゃん
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■温かなお皿・・・1人で泣きたい女の泣きのタイミング
 クリスマスシーズンに送る、珠玉のラブストーリー・・・ってところでしょうか?一定レベル以上の生活を保障された妻。仕事をして生活を守って家族を守ってくれる優しいハンサムな夫がいて、かわいい娘がいる妻。彼女の日常はハウスキーピング、夫を送り出し、娘を送り出し、次は帰りを待つ。その間にご近所の主婦たちにお菓子教室みたいなことをして、お茶会もして。身につけるものもさりげなくブランドもので、家にある食器もブランドもので、時々夫と行きつけのきちんとしたレストランに食事に行く。そんな妻。

 その妻は今井美樹。高校生の娘にキレイな色のファンデーション(下着)をコーディネートしたものをクリスマスプレゼントにするような母。夫は三浦友和。高校生の娘にまだまだ娘でいてほしいし、男の気配なんてそんなそんな、そんな風に思いながら、全てが、まわりの羨望の的であるような理想的な家庭のはずが、実は、この夫は同じ会社の部下と不倫をしていた。その彼女は水野美紀。一人暮らしのOLのわりには結構いい感じの部屋に住み、当り前のようにやってきてくれる彼に料理をしてもらい、楽しい時間を過ごし、家庭へと送り出す。何かを奪っているとしたら、彼の時間を少しもらっている、そんなくらいにしか深く考えてはいない。いい意味で。

 ある日、その秘密がわかってしまう。妻はどうしたか?行きつけのレストランに予約を入れる。ランチの温かなお皿をかこむのは、夫とではなく、夫の恋人。2人は特に修羅場な話をするわけでもなく、どちらかというと雰囲気にもおされぎみの恋人に、妻はさりげなくアピールすることになる。「あぁ、こんな素敵な奥さんだったんだ。この2人には私がはいりこめない無数の時間や想い出があるんだ。そう、このお料理ひとつにしても」(この場面でメートルドテル(?)の藤村俊二さんの控えめな演技がまた最高によかった)恋人はいたたまれなくなる。自分はそんなつもりじゃなかった、決して奪ってやろうとか、そんなつもりじゃなかった。ただ彼が好きだった。少しだけ彼の時間をわけてもらって充分幸せ、そんな恋愛だった。それだけど、そう思っていたのは私だけで、実際には、こんな素敵な奥さんとそしてきっと素敵であろうお嬢さんを苦しめていたのかもしれない。いたたまれない思いで、せっかくの料理を味わうことはできない。

 料理もお酒も、空間、時間の流れ全てを支配した妻は、彼女に特に夫のことを責めたりはしない。そう、例えば、彼女のもちものから、私も猫が好きだったわ。と、さりげに彼との思い出をちりばめていく、それは、妻の余裕というよりは、本当に懐かしい思い出を話すように。彼女のように若かった頃、そういえばこんなことがあったわね。そんな風に。そして別室でお茶をいただく時間になり。いたたまれない彼女に「今日はごめんなさい」とまで言いながら。実は彼女に強いプレッシャーをかけていたのだ。夫の選ぶ人だから、ばかな女じゃないと思っていたのだろうか、そして実際にあった彼女をそう見込んだのだろうか。彼女の若さに嫉妬しながら、そして自分のそんなやり方に情なく思いながら、天使のように微笑んでこの不思議な妻と愛人のランチは終る。

 そのあと、別れた二人は結局泣くのだ。いたたまれなくて。若い恋人はショーウィンドウを見ながら、会食の途中から「別れなくちゃ行けない」そう感じながら、彼女は泣く。そして、妻は?ひらりと、彼女と別れ際に手を振る。余裕のあるマダムである。しかし、タクシーを拾い、乗り込んで彼女は泣いてしまうのだ。かわいい人をいじめてしまったわ、と。なんだか少し偽善的な気もするが、女を2人泣かせてしまっているとは気づきもせず、この日を過している夫は、いい女を選んでいたということか。とにかく、この2人の女性の泣くタイミングが絶妙だった。


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12月26日(水)
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