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ドラマ!ドラマ!ドラマ!
by もっちゃん
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■「こんにちは、母さん」@舞台中継をテレビ鑑賞
なにげなく、NHK総合をつけたら、丁度、永井愛作・演出の「こんにちは、母さん」が、始まって10数分のところだった。新国立劇場小劇場で今年3月に公演されたものだ。こんなに豪華な俳優陣で、しっかりしたお芝居を、5000円代で、観られるなんて、なんて贅沢なんだろう。終ってみてそう思った。

 加藤治子さんが、70代の母親役で、出演されていた。私は江戸の人ではないので、本物の江戸弁は、きっとわからないんだろうけど、多少、お江戸が舞台の歌舞伎も観ているので、加藤さんの、きっぷのいい、流れのいい、語尾の切れのいい、江戸弁の「母さん」を、カッコいいとおもった。音響設備も整っているのだろうが、御年おいくつになられるのか、加藤さんのかわいさと、こ気味のよさが、とても素敵だった。
 
 2年ぶりに、息子が帰ってくると、そこは、外国人留学生の下宿屋斡旋、地域とのつながりなどを目指したボランティアの基点「ひなげしの会」事務所で、「母さん」は事務長。母のルスに突然やってきた息子は、中国人留学生にこそドロと間違われる。しかも、その次現れた親父は、どうやら、「母さん」と恋仲のような雰囲気。この何とも、身の置き場のない、それでも生真面目な息子を平田満が好演していた。(この息子、折り合いの悪い父に母の所在を尋ねるのも嫌で、持ち出す財布により、母の行き場所の検討をつけてきて、今もそのクセが抜けないのだ。注:決してマザコンではないと思う。)

 足袋職人をしていた父親と気があわず、大学1年で下町の家を飛び出た息子は、もう40代。妻と息子がいるが、どうやら離婚カウントダウンと観客にも見て取れる。しかも、先の人事異動で、リストラを断行していく総務部人事部長に。とりあえず、辛い現実から逃げるように、しかしそれを語ることもなく、今は父も亡くなり「母さん」だけの家に帰ってきた、はずだった。

 「母さん」は、自分の見たこともない、カラフルな服装で、ボランティアにいそしみ、留学生の学ぶ姿に触発され無料の「源氏」の講座に出かけ、講師である元大学教授「直ちゃん」(杉浦直樹)と恋をする。まわりには、同級生が煎餅屋の女房におさまったものの、息子が蒸発した女性。突然やってきた、元ヒッピーのスウェーデン人の夫にこれまた蒸発された女(田岡美也子)。そして、ついに、平田のリストラを根にもった同期が突然押しかける。「悪魔」とまでののしられる。その男に同情する、田岡。

 「母さん」は、はじめて「直ちゃん」の家に行ったが、下町と山手では暮らしが合わず、随分恥ずかしかった。それを「直ちゃん」が、かばってくれなかったのが、悲しい、もうやめようと言い出す。それから1ヶ月。息子はついに荷物を増やして家に帰る。「ここに住む」と決めた。同じ日「直ちゃん」も結婚するからと長男夫婦を説得できずに家を出てくる。不思議な3人の同居生活が始まる。
 父の遺品の中で、リサイクルできるものがあれば、と、人手を借りて、留学生にひきとってもらった。その中に、戦争中使っていたと思われる飯盒が出てきた。まぎれてはいってしまったものだけれど、中国からの留学生の心の傷に触れるからと返却される。「直ちゃん」の息子は一度も顔も見せない。妻が義父に協力している。そしていずれ自分も離婚すると決意したと言う。


 父との大きなすれ違いは、小6の頃トイレの柱にビートルズの絵を落書きしたことだ。「直ちゃん」は自分も息子のEP盤を全て取り上げてしまった、後悔していると言う。遺品の一部のカセットテープにビートルズが入っていた。「直ちゃん」は君の父親も君を理解し様としていたんじゃないだろうか、と言う。あの日叱った事を後悔しつづけているんじゃないか、と。しかし、「直ちゃん」は、自分の息子にそのことを謝る勇気はまだ持てなかった。その「直ちゃんが」これからという引越しの終わりに、階段で足を滑らして(?)死んでしまう。「直ちゃん」の息子は葬式でも無視だった。きっと49日の法要の知らせも来ないに違いない。息子が帰ると、「母さん」は、ごはんはいらない、と一升瓶から酒を注ぐ。


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12月09日(日)
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