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鼻くそ駄文日記
by iwa
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■夏休み企画12
そろそろ無理矢理終わらせます。
『内弁慶』
ぼくはいつも腹が減っている。母親はそのことを承知している。中学に入ったときから、ぼくの茶碗は父親のそれよりもひとまわりでかい、ほとんどどんぶりではないかというようなものになったし、おかずだって他の家族よりも多めにぼくのぶんを作る。
ただし、これは家での話だ。
母親はよく言う。
「章二くんのお母さんにあったんだけど、あなた、あんまりごはんいただかなかったそうね。章二くんのお母さんが、弘晃くんは章二に比べて食が細いと言ってたわよ」
「あなた、おばあちゃん家に行ってもあんまりご飯食べないわね。家に帰ったとたん、お腹が空いたなんて。よっぽど家のご飯がおいしいのね」
そうなのだ。ぼくはよその家のご飯を食べることが苦手なのだ。特に中学に入って給食がなくなってからこの傾向は顕著になった。
とは言っても、外食が苦手だ、ということではない。飲食店での外食やコンビニでの買い食いは清潔そうだから平気だ。むしろ、家の食事よりも好きなぐらいである。ぼくが苦手のは、よその家に上がってよその家の食事を食べることである。
よその家の食事は怖い。
すごく不潔な気がする。
たとえば、章二の家でご飯を食べたときの話をしよう。
中間試験中、ぼくは章二の家で勉強と称して遊んでいた。不思議なもので、試験中にひとりで部屋のテレビを見ていると、勉強しなくちゃいけないのにと罪悪感で胸がいっぱいになるが、友達の家で友達とテレビを見れば、こいつも勉強してないのだから大丈夫だと安心できる。ぼくはひとりになりたくなくて、暗くなっても章二の部屋にいた。章二も気持ちは同じようで、ぼくがまずいかなあと思って帰ろうかとするたびに「まだ、大丈夫だろ。いろよ、ここに」と引き留めた。
外は暗くなっていた。時計が七時を回った頃、章二の母親は声をかけた。
「もうすぐ、ご飯食べようと思ってるんだけど、弘晃くんも一緒に食べていかない?」
ぼくはささやかに抵抗した。
「いや、結構です。もうそんな時間ですか? それではうちのものが心配するといけないので帰ります」
しかし、章二の母親のほうが一枚上手だった。
「ううん、それは心配しなくていいのよ。もう、弘晃くんのお母さんには電話しておいたから。ちゃんと弘晃くんのぶんまで作ったから、食べていきなさいよ」
すでにぼくが家に来たときから、ぼくに食べさせるつもりで章二の母親はちゃくちゃくと夕食作りに取りかかっていたのだ。
わざわざ家の母親にまで電話を入れて。
それも親切心から。
ここまで用意周到にぼくに夕食を食べさせようとしている人の招待を断ることなどできるだろうか?
ぼくはよその家でご飯を食べるのは苦手なのでいらないです。
それが本音にしても、言えるわけがない。
「わかりました。では、いただきます」
ぼくにはそう言うことしかできなかった。
章二の母親の案内で、食卓へ行く。
よその家の食卓は変な臭いがする。まあ、よその家から見たら家の食卓だって変な臭いがしているのだろうけど、自分の家だから気にはならない。他人の鼻くそは触れなくても、自分の鼻くそは触れるものだ。
ぼくは、よその家の食卓や玄関では、短い時間で済むときならぼくは息を止めるようにしているが、息を止める限界を超える時間滞在しなくてはならない場合は、嗅覚を麻痺させるために臭いを思いっきり嗅ぐことにしている。この臭いも三分も嗅いでりゃ慣れるんだ、と自分に言い聞かせた。
「おみそ汁、温めるね」
章二の母親は言った。ぼくは章二に勧められるままに冷蔵庫の隣の椅子に座った。幸いなことに、章二の家族は他にはいなかった。ぼくは自分の家の父親も苦手だが、よその家の父親も苦手だ。これは、自分のうんこを触るのはいやだが、他人のうんこを触るのはもっといやだというのに似ていると思う。
章二はテーブルに鳥の唐揚げやほうれん草のおひたしなどのおかずを並べてから、ぼくの向かいに座った。その後ろのキッチンで章二の母親がみそ汁を温めている。
そして、ぼくは衝撃的なシーンを見てしまった。
「今朝作ったのだから、味が濃くなってるかもしれないねえ」
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08月26日(火)
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