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鼻くそ駄文日記
by iwa
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■王様ゲームの思い出
王様ゲームをはじめてやったのは、中学生のときだった。
と書くと、このiwaという奴は、なんてませたクソガキなんだ、とお怒りになる人もいるかもしれない。中学生から王様ゲームをやってるから、iwaはろくな大人になっていないんだ、と妙に納得する人もいるだろう。
先に言っておく。誤解です。なぜなら、男三人でやったからだ。
夏休み中の夜だった。
やっといろんなところに眉毛程度の毛が生えだしたぼくらは、MくんとHくんと徹夜をしようと決めた。
午後十時には真っ暗になる田舎町で育ったぼくらにとって、一晩、みんなが眠っている時間に寝ないで起きておくことは、ものすごくロマンティックなことだった。そして、どこかわくわくする冒険心をかきたてられることでもあった。
夏休みを利用して徹夜をしよう。そう決めたぼくらは、蒸し暑い夏のある日にぼくの家に集まった。
徹夜をすると決めたものの、ぼくらは正しい徹夜の仕方を知らなかった。
もちろん、正しい徹夜の仕方などというマニュアルはこの世には存在しないのだが、ぼくらは勝手に、ファミコンなんかをしながら夜を明かすのは徹夜的ではないなあと思っていた。
そこで、まあ、タバコを吸ってごほごほ言ったり、酒を飲んで顔を真っ赤にしたり、ビニール袋にプラモデル用のセメダインを入れて吸ったりしていたのだが、どうも徹夜という雰囲気が出ない。純朴な田舎の少年たちは、悪いことをしているという先入観があるだけで、タバコにも酒にもセメダインにも及び腰でいまひとつのれず、どうがんばっても小学校のキャンプみたいな雰囲気になってしまうのだ。
ぼくらは勝手に徹夜とはそんなほのぼのとしたものじゃなくて、もっと大人っぽくてロマンティックな冒険なのだと思っていたから、ほのぼのとした雰囲気を楽しめず煮え切らない気持ちでいた。
そんなときに、中学生ながら『ホットドックプレス』を読んでいた、ぼくらの仲間にしてはませているHくんが、
「そういえば、自宅で酒を飲むときには、大人たちは王様ゲームというものをやるらしい」
と言った。
ぼくとMくんは、
「なんじゃ、その絵本の題名みたいなゲームは」
とHくんに訊く。Hくんは、
「おれもやったことはないけど、簡単なルールだから。割り箸を使うんだけど、割り箸はある?」
と言い、ぼくは割り箸を用意した。
ぼくはわくわくしていた。中学生の頃のぼくは、自分がこれまでの人生で知らなかったことをいまからやる、という状態を非常に好んだ。おそらく、Mくんも期待に胸を膨らませていただろう。
Hくんは割り箸をぷちんと二つに割り、「王」「1」「2」と書いた。このゲームのやりかたを憶えなければとぼくとMくんは真剣にHくんの作業を見つめていた。
だがHくんは、
「これで準備ができた。はじめようか」
と言う。
ここにきてぼくははじめて、不安になった。あまりにも準備が簡単すぎる。割り箸をぷちんと割って、割り箸に「王」という文字と数字を記入しただけである。
拍子抜けしたぼくらをよそに、Hくんはこういうのをやるのがおしゃれなんだよねとでも言いたげに、三本の割り箸の数字の書いてあるところを握った。
「この箸を引いてみな」
ぼくとMくんは呆気にとられた。これでは、おみくじとそう変わらないではないか。
と思っているものの、とりあえず好奇心だけで引いてみる。ぼくは「1」の数字を引いた。Mくんが次に引き、最後の残り物がHくんのものになった。
「王って書いているのを引いたのは誰?」
Hくんは訊く。Mくんが困惑気味に、
「おれだけど」
と言った。
「そしたらね、王様は、数字で命令ができるんだよ。1番と2番がキスをする、みたいにね」
とHくんが言った瞬間、ぼくの目の前は真っ暗になった。
ぼくは1番を持っている。そして他に誰もいないから、必然的に2番はHくんだ。なんてこった、Hくんとキスしなければならないのか?
しかし、王様は残酷にもそれを宣言した。
「じゃあ、それ」
Mくんはそう言った。ぼくはHくんとキスをする羽目になった。
「え、これは口づけなの?」
救いを求める目でぼくはHくんを見た。
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09月04日(火)
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