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へそおもい
by はたさとみ
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■魚の目玉
先日
人生で初めての太刀魚釣りに
つれていってもらった。
船釣りである。
船酔いするかもよ…という
噂をきいていたので、
1円玉を四枚持って行った。
4円を握りしめると
酔えん…という
ダジャレなおまじないなのだが
小学生のころ車酔いがひどかったわたしには
よく効いたのだ。
もうすぐ朝陽ののぼる港から
釣り船は海にでる。
それにしてもすごく揺れる。
あれよあれよという間に沖にでて
釣りの準備がはじまる。
あれよあれよという間に
気分が悪くなり
朦朧としはじめる。
朦朧としながら
釣り方をおそわる。
いわしを仕掛けて
釣り糸をたらす。
朝陽がのぼって
こんなに空が美しいのに
身体がぎゅるぎゅるして
カメラを出す余裕がない。
4円を財布からだす行動すら
エネルギーがなくてできない。
身体の中が
蝶のさなぎの中身のように
すべてどろどろの液体になって
まざってしまっているようだ。
それからわたしは
朦朧としたまま
@船のへりにつっぷする→
A船のへりから海に吐きまくる→
B少し元気になって釣りに復活→
@間もなく船のへりにつっぷする→AB…(以下くりかえし)
というサイクルを
何度も何度もくりかえして
船の上で6時間。
その間中
魚の目玉や空や水や内臓が
ぜんぶ空気のなかに
いっしょくたに
なっているみたいだった。
だんだん空は曇り
風がつめたくなる中で
つっぷしていると
このまま身体がつめたくなって
しんでしまうかもしれないと思い、
父よ母よ夫よ…ごめんなさい…と
つぶやいたりもした。
でも、わたしは
生きて帰れたのだ。
船が陸につくと
すっかり酔いもおさまり
温泉でさっぱりして
友の旦那さんがやっている居酒屋へ。
釣りのあいだの記憶が朧なので
さて、わたしは何匹つったのか?
クーラーボックスをあけてみると…
太刀魚7匹もつっているではないか。
意識朦朧の割には
なかなかやるではないか!
生きて帰れた上に
大漁(わたしにとっては)とくれば
よろこびもひとしおである。
太刀魚をお刺身にしてもらい、
ワインと日本酒を飲む。
お店の大将がつくってくれた
お祝いみたいな料理をいただく。
すっかり漁師の気分である。
みなに
酔っていて意識がなかったから
釣りの神がおりてきて釣れたのだ
意識があったら釣れないのだと
いわれながら飲む。
「吐きまくりのさと」という称号を
もらいながら飲む。
なんとも
しあわせな夜であった。
陸にあがってしまえば
船酔いは幻のよう。
手元には太刀魚がいる。
のこりは、
一夜干しと切り身の冷凍にして
すこしずついただいている。
自分が食べるものを
自分が直接自然からいただくということに
いま興味がある。
釣り…
またいきたいような、
こわいような
複雑な気持ちの
今日この頃なのである。
朝陽がのぼってきました
酔ってきました
空にも太刀魚がおよいでいます
酔いながらも獲物の記録
こっちを見てるけど、
がんばって頸動脈を切ります。
(朧ながらもなんとかやりとげる)
獲物の写真はこの2枚だけ
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11月12日(土)
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