ID:3398
へそおもい
by はたさとみ
[8714hit]

■裏の犬
裏の夫婦が飼っている犬が
五月蝿い。

いつもは締め切った家の中で
キャンキャンないているのに
今朝はどうやら
窓をあけているらしく
いつもより近くで
声がきこえて
それで目が覚めた。

昨夜はとてもおそかったので
まだまだ眠りたいのに
なんだよこのくそ犬め!
と不機嫌にののしっているうちに
犬が裏の夫婦の
夫のような気がしてきた。

裏の夫婦。

妻はとんがっていて
口が達者で早口で
にこやかにしながらも
目の奥が光っていて
ゴミ捨て場でであったりすると
ゴミをチェックされそうで
びくびくしてしまうような人。

夫はのんびりおおらかで
いつも庭木いじりや
壁の塗り替えを無口に
もくもくとやっていて
挨拶をすると
はっとしたようにこちらをむいて
軽くうなずく四角い顔の男。

犬の鳴き声をきいているうちに
夫がなにかへまをして
妻に犬にかえられてしまった気がしてきた。

鳴き声もいつもより
おちついた低い声で
人間が“わん”と発音しているように
聴こえてくる。

夫はパンツ一丁で
四つん這いで
わん、わん、わん。
わん。
わん、わん。
と縁側で力なく
ほえている。

妻はぷりぷりと
台所のテーブルをふいて
それから
多分大きな白菜を
ぶった切っている。

夜は白菜のクリームスープだけれども
犬(夫)にはプラスチックのお皿で
縁側で食べさせるのだろうか。

おお
たいへんなことになっているぞ。
ひどいぞ妻め!
普段からどうも
腹黒いとはおもっていたが
夫を犬にしてしまうなんて!!

そうおもっているうちに
完全に目が覚めてしまい
よく考えてみると
こんなことを考えるわたしこそ
ひどい人だったのでした。

ごめんなさい。

あ、でも今しばらく
なきやんでいる。

仲直りしたのかもしれないね。

09月04日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る