ID:31657
to Die
by 293とうめこ
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■薫バ
それは堕威にとっては毎年の事であった。
彼等は誕生日が一日しか違わないから、祝う側としてはちょっと手間なのだが。
それでも堕威は彼等の喜ぶ顔が見たいし、自分では思い浮かばなかったのでそうしていたのだった。
「誕生日何が欲しいん?」
そう、堕威はそう言っただけであった。
そこから自分が非現実的な部分へと足を踏み込むとは思っていなかった。
だ っ て い つ も の こ と だ か ら
そう、毎年の恒例だったから。
そして彼等は心許せる仲間だったから。
今年も気軽に言ったのだ。
そして二人は同じものを所望した。
「堕威ちゃんが欲しい…」
「堕威くんとヤりたい」
言葉は違えど二人の熱い眼差しの色は同じであった。
見つめるものも同じであった。
二人には別々に聞いた。
なのにこんな答えが返ってきてしまい堕威は困惑する事しかできなかった。
堕威にとって二人はどんなに譲っても仲間なのである。
彼等は一緒にステージに立ち、曲を作って友情を深めあってきた兄弟の様な存在なのだ。
彼等には普段人に見せれない様な情けない姿や杜撰な部分を見せてきているはずなのに、どこでどう友情が愛情にまかり間違ってしまったのか…
堕威にはそれが検討も付かなかった。
だから…
「はぁ!?何言うてるん!冗談うまいわー!」
そう言って二人をはぐらかした。
ちゃんとプレゼントも普通に買った。
ただ、当日の予定だけは立てなかったが。
しかし他は普段通りにセッティングしたのだ。
いや、そう繕った。
でないと堕威自身恐くて彼等に顔向けできなかったのである。
仲間が別のものに変わってしまう恐怖。
堕威の背後にはそんな得体のしれないものが迫っていた。
そしてその不安を大きく心に残したまま彼等の誕生日の日はきてしまった。
堕威はあまり忍耐強くは無いので京の誕生日の日に二人にプレゼントを渡してしまうのが常である。
何が欲しいのか聞いたのはだいぶ前だったので堕威もその頃には二人の発言も忘れてにこにことプレゼントを渡していた。
「おめでとー」
そう言って渡すと二人は嬉しそうに堕威の手渡したものを受け取った。
堕威はそれだけで幸せであった。嬉しそうな人の顔というものはやはり気持ちが良いものである。
しかし、次の薫の発言で堕威一気に現実に引き戻されたのだった。
「堕威ちゃん今晩大丈夫なん?」
堕威はハッとして薫の顔を見る。
そこには普段と変わらぬ薫のにこやかな笑み。
何や普通やん…
しかし堕威は彼の普段通りの表情を見て自分が過剰に反応したんだと思った。
そしてあれは自分をちゃかして遊んでいたのだろうと思い、憤りを感じた。
それでもその程度で楽しい時間を失ってしまうのはもったいないと堕威は思った。
「めっちゃ開いとるで!何?どっか飲みに行くん?」
「うちにな、ええ酒が有んねん。やから一緒にな?」
薫はくいっと酒を飲む仕種をする。
堕威はそんな彼に快く頷き、じゃあまた後でとその場を後にした。
********
「うーさぶっ!!」
コンビニから出た堕威は開口一番こう言った。
袋の中にはおつまみや酒類が入っている。酒盛り準備は万端である。
ここから数分もしない場所に薫の住むマンションが有る。
彼の部屋はいつも通りCDや人形で溢れ返っているだろうか?
堕威はそう考えながら町中を歩く。
外を歩く人は堕威の誕生日の日と違い疲れた顔をした人が多い
堕威の誕生日はクリスマスに近いので皆一様に浮かれ気分なのである。
堕威は普通の日に誕生日を迎えられる他のメンバー達を少々羨ましく思った。
皆が普通の日に自分が浮かれていられるというのはけっこう優越感に浸れるものである。
薫のマンションは他のメンバーと同じくオートロックであった。
堕威はルームナンバーを押し、インターフォンに出た薫に"俺俺"と存在を告げた。
すると扉がすっと開く。
堕威は中に入りエレベーターに乗る。
このマンションは新しいからかエレベーターの速度が早く、尚且つ静かで乗り心地が良い。
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02月17日(金)
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