ID:31657
to Die
by 293とうめこ
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■走った
暖かい缶を手に砂の上。
バンマスは遠くで石を投げている。
隣には幾分か小さめの表現者。
「言わんの?」
海風に目を細めたまま言ってくる。
俺は答えられなくて下を向く。
彼はそんな俺を見てふっ・・・と笑た。
「言うは一時の恥、言わぬは一生の恥やで」
「それまったく違うで」
「そう?」
肩を竦めまたふっと笑う。
それが彼なりの鼓舞なのだろう事は知っている。
「堕威くんはあかんなぁ。俺より恋愛に強いくせに俺より勇気ないのな」
彼はそう言って砂を蹴った。
そして尻ポケットから煙草を取り出すとマッチで火をつけている。
彼は俺と違って律儀にも煙草をちゃんとケースに入れている。
そして最近はジッポではなくマッチを愛用しているらしい。
俺はぐしゃりとポケットに入れただけ。
たまに煙草が折れている。
「言いなや」
そんな事を考えていると煙草から口を離した彼が言ってきた。
「言ってきなや、あのおっさんに。思いぶつけてきな」
真剣な顔で俺にそう言う彼の声は震えていた。
「京くん・・・・」
俺は胸の下あたりがキューッと痛むのを感じた。
「でないと、俺が先に言うで」


その言葉を聞いた瞬間、俺は石を投げる薫の方に走っていた。
ちらりと横目で見た京くんは目にいっぱい涙を溜めていて、しかし俺は薫くんが好きで。

だから走った。


END

京→薫←堕威とみせかけて京→堕威→薫
10月30日(日)
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