ID:31657
to Die
by 293とうめこ
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■薫バ
だから堕威はこのエレベーターを結構気に入っている。
薫の住む階は他よりも値段が張り、部屋のサイズも大きいからか部屋数が少ない。
薫は角部屋でエレベーターから一番遠い。
玄関に付きインターフォンを押す。
すると殆ど待たされもせず玄関の鍵が開く音がして扉が開いた。
堕威はそれに嬉しくなり、笑みを深くする。
その先に待ち受ける普段通りの薫を想像し、目があったらまず何て言おうかなんて考えて…。
しかし開いた扉の先には思いがけない人が居た。
「え?きょぉ…くん?」
扉を開けたのであろう薫の後ろににっこりと微笑む京が居る。
堕威はそれを見たのである。
「何で京くんがおるん?来るんやったら教えてくれたってええやんか!」
そして次に自分がのけ者にされた様な気がして薫に怒りも露にそう叫んだ。
しかし薫はそれに笑みを深くするばかりで何も言ってはこない。
そんな薫の態度には堕威はふと不安を覚える。
そのまま京をまた見つめる。
京も無言で堕威を見つめてくるばかりである。
そこで堕威はまたあの言葉を思い出す。
「………あれは冗談やったんやろ?」
縋る様な顔で言う。
「冗談であんな事言えるわけないやん?」
薫がそれに対して踊る様な声音で言ってきた。
京もそれにニヤリと笑みを深くする。
堕威は思わず背後によろける。
しかしその身体は後ろに尻餅を付く事もせず、不自然に止まった。
薫の手が堕威の腕を掴み、倒れるのを防いだからだ。
そしてそのまま堕威を強く引き寄せる。
今度は前にのめってしまう堕威の身体。
それを薫は自分の体躯で受け止め、自分よりも大きな堕威を抱き込んでしまった。
「ここに来たってことは、了承したって取ってええんやろ…?」
堕威の耳に甘い声が吹き込まれる。
「堕威くん、もう逃げられんなぁ」
遠くから京の声も重なり、堕威はその非現実加減にくらりと目眩を覚えた。
夢か現か…
そんな空間で堕威は身動き一つできない。
京と薫は固まってしまった堕威を優しく見つめている。
バタン
玄関の扉が閉まる。
それはあたかも堕威を現実から引き離すかの様に硬い音であった。
END
02月17日(金)
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