ID:31657
to Die
by 293とうめこ
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■鯨---2
相当素人でも無い限りこの様な依頼はしてこないのである。
「・・・・知ってます。新倉さんが女の人しか彫らないのは・・・でも俺にとってはあんたじゃなきゃ駄目なんだ」
青年・・・堕威は薫の素っ頓狂な声にもめげず、強い意志で明言する。
「ふーん・・・・理由くらいはきいたるわ」
薫はそんな青年の依頼を受ける気もなく、興味本位で理由を問うた。
青年は薫の瞳を見つめる。

「理由・・・っていうか・・・母の遺言やから。背中の刺青を彫ってくれた人の息子さんに・・・その続きを彫ってもらえって」

その言葉に薫は二重の驚愕を覚えた。
「親父!?そんなはずないで!親父かて女しか彫ってないはずや!!」

自分の父親に裏切られた様な錯覚を薫はおこす。
今まで信じてきた事実を覆された・・・そんな気がしたのだ。
「はぃ、それも知ってます・・・でも俺の背中には・・・そん人の彫りかけの刺青があるんです。絵柄は何でもええ・・・ただ最後まで彫ってほしいんです・・」
堕威は切実に薫に言う。
ぎゅっと胸元を握り占め、必死に薫を見つめながら。
薫は当初驚いたものの、あまりの事実に一気に脱力感を覚え、つい身を乗り出していたのをソファーに一気にうずめる。
そしてちらっと堕威を見つめ何かを思いつき言った。

「そうや・・・それやったらその刺青今ここで見せてくれや。俺もあん人の息子でプロや。自分の身内の彫りもんくらい見分けつく」
薫がソファーに体を預けたまま堕威を促す。

堕威はその言葉にハッと目を見開いたが、下を俯き数瞬恥ずか気にしてそのまま後ろに振り返り服を脱ぎはじめる。
そして上半身が全部晒されてしまい、それは現れた。
堕威の背中には見事に咲き誇る真っ赤な椿が描かれていた。
堕威の上半身左下に鎮座したそれはとても美しく堕威の背中に栄えていた。
「・・・・・・間違いなく親父や・・・よっしゃ引受けるわ」
薫はその刺青を見た瞬間今までの渋り様が嘘の様にあっさりと承諾した。
堕威もそれをきいて拍子抜けするが、すぐに”ありがとうございます!”っとお礼をする。
そして、隣に置いていたドラムバックを開いた。

「報酬はこれで」

中には大量の札束。

薫はそのドラムバックを一瞥する。

「そんなん、彫った後でええわ。俺はお前に興味が湧いたから彫るんやから」

薫は堕威にそう言うとソファーから立ち上がり堕威の背に手を滑らせた。
いきなりの事に堕威の背がひきつり、体がビクッと揺れる。
「お前ほんま何や?服着てたらただのあんちゃんやのに・・・脱いで背中を晒した瞬間ものすごい色っぽいで・・・」
薫が堕威の肌の状態を確かめつつ言った。
「そんなっ・・・・わかりませんっ・・・・」
堕威は背中の手に耐えながら薫を見た。
薫はふっと笑う。

「まぁ、ええわ。じゃあ、依頼人は完成するまで俺と一緒に暮す事んなっとるから、さっさと慣れてくれ」

薫は一通りチェックすると堕威から離れる。
堕威はその瞬間服を着込んだ。
そしてドラムバックを持つと、頬を真っ赤にしながらぺこりと一礼。

「よろしくお願いしますっ」

薫はそれを見ながら、あぁ面白くなりそうや・・・っと口の中で呟き、そのままそれを噛み殺し闇へと葬ったのであった。


つづく

ねむっ!寝る!

07月12日(月)
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