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マシンガン★リーク
by 六実
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■おとうさん、アーバン乗るから 迎えに来てね(字余り)
 朝起きてから何を思ったか突然ビデオの整理を始めてしまいました。主に小部屋をHDDに吸い上げ処理。WOWOWは契約していなかったんですが、たまに知人友人に撮ってもらっていたのでそれを一通りチェックして、処分するものは処分。別に今やらんでもいい事なんですが(笑)でも雪組エンカレ(初回・志紀さん出演)を見つけたり、思いがけない収穫もあったのでよしとします。




[よいこのためのあたらしいあそび]


 またおごりんとあたらしいあそびをはじめたよ!(煩悶道場参照)

 ちなみに「にほんばし」は大阪の電気街の日本橋ではなく、東京の日本橋です。何故日本橋なのか、それは最近六実さんの中で日本橋近辺がアツイからです(笑)。



 それじゃあ、サンプルテキストを出しておきます。

 一応反転


 夫が亡き後も板場を支えてくれていた老料理人が、体調不良で毎日の出勤が無理になった。知り合いに頼み、週何日かだけ手伝ってくれる料理人を探したかつき。紹介されたのは、驚くほど若い料理人・麻尋だった。
 麻尋は口数が少ないおとなしい若者だった。が腕は確かで、夫が存命中からの常連客も「いい子が入ったね、安心したよ」と喜んでくれた。そんな風に誉められても、麻尋は黙って頭を下げるだけだった。今時の子だねぇと常連客は笑ったが、かつきにはそんな麻尋の態度がかえって好ましくも見えた。
 仕事中はいたって真面目で、きっちりと仕事をこなす。開店前の準備も開店後の片付けも黙々とする。最初はそれが気詰まりだったが、そういう子だと納得するとそれもどこか心地よかった。今までこうして手伝いに来てくれた料理人はたいていかつきの事を根堀葉堀聞いたものだ。若くして未亡人となり、夫の形見の小料理屋を営む自分に、普通は好奇の目を向けるのだ。
 ある日、麻尋が独り暮らしと聞いたかつきは、家でつくってきた惣菜を小さなタッパーに入れて麻尋に渡した。つくりすぎちゃって、お口にあわないかもしれないけれど、と言い訳しながら。麻尋はちょっと驚いてそれから、はにかむように笑い
「…ありがとう」
 思えばそれが笑った麻尋を見たさいしょで、それまで堅苦しかった麻尋の言葉遣いがくだけたさいしょだった。
 嬉しくてかつきはそれから度々麻尋に惣菜を作った。麻尋はいつもおいしかったとタッパーをきれいに洗って返した。お世辞かもしれないが、かつきは嬉しかった。そうやって麻尋に向ける好意が次第に何かに変わるのをかつきは感じた。しかしそれはおぼろげなまま終る自覚もあった。
ある日、南瓜の煮付けを作ったとき、麻尋は言った。
「ごちそうさま。…母さんとおんなじ味だった」
 かつきが聞き返す間もなく、麻尋は板場に戻りまたもくもくと仕込みを続けた。幼い顔をしているのに妙に大人びている麻尋の本当の姿を見た気がかつきはした。まだまだ、子どもなんだ。
 翌日もまた南瓜の煮付けを作って渡した。麻尋を喜ばせたくて、つい作りすぎてしまい、いつもより大きなタッパーで渡したら、麻尋はぷ、と笑った。
「奥さん、そんなに食べられないよ」
 思わず顔を赤くするかつき。麻尋はまた笑った。
「じゃあ一緒に食べようよ。まだ食べてないでしょ?確かごはんが残ってた」
 閉店後のカウンターにタッパーと余り物のごはんを並べて二人で並んでいただきます、と手を合わせる。目が合うとまた麻尋が笑った。慣れない笑顔に、いやそれ以外の説明のつかない何かに、かつきは心臓が跳ねるのを押さえられなかった。
気を紛らす為に鼓動を誤魔化すようにかつきは聞いた。
「麻尋君のおかあさんて…」
 南瓜の煮付けは母の味だと言う。しかし言ってすぐに、聞いてはいけないことだと悟った。
「不思議なんだ。おんなじ分量でおんなじやりかたでつくっているのに、何故かこの味にはならないんだ。ねえ?何か特別なものつかっているの?」
 麻尋がつるりとそらした話題に乗る。
「そ、そんな特別なもんじゃないわよ」
「きっと何かが足りないんだね。それって、僕に足りないものなのかもしれない」

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05月04日(金)
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