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マシンガン★リーク
by 六実
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■今日は何曜日?
三連「出」三日目にしてようやく午前半休(いやそもそも休みだから)(何もかも間違っている)。
漏らします。
[市川全ツ参戦祈願テキスト]
彼と頬を寄せて踊る。若い肌がひたりと吸い付く。そしてくすくすと笑う。彼が耳元で冗談ばかり言うから、彼の息が耳たぶを撫でてくすぐったいから、彼と踊っている事がなんとなくおかしいから。そして彼も笑う。頬を寄せて踊る彼がどんな顔をしているのかは見えない。彼の肩越しに見えるのはざわめく空気、けだるい照明、いつもの見慣れた光景。
踊るボーイの中に彼を見初めたとき、なぜか視線がひきつけられた。しなやかに舞う指先、眉間を寄せて何かを込めるように踊る姿がとても色っぽかった。こちらにウィンクを飛ばし、片頬をあげて挑発するように笑い、駆け引きを仕掛けるのが上手だった。だから彼が私に手を差し出したとき、私は彼の手をとった。そしたら、彼はひどく驚いた顔をした。信じられないという顔をした。目を大きく見開いて、頬が一気に紅潮して。その意味を取りあぐねていたら、彼は私を抱き寄せた。唇が近づく、キスされる、と思ったから交わすかどうか考えあぐねていたら、彼の唇はそのまま私の耳元に寄せられた。何か色っぽい言葉を、駆け引きの言葉を言うのかと思っていたら、彼は冗談を言って、私を笑わせた。
いつも彼と踊る私にずいぶん気に入っているのね、と彼女達には笑われた。ええとても気に入ったわ、だってかわいいもの、と私は言って彼女達と笑いあった。本当は、かわいいという言葉は正しくないような気がしている。だってかわいいだけなら、飽きるもの。今までもそうだったようにかわいいだけじゃ飽きるもの。なのにわたしはちっとも飽きていないもの。
今日も彼と踊る、いつもの冗談。くすくすと笑いあう。本気なんてここにはどこにも落ちていないのだから、それはとてもこの場所に似合っていた。けれどもなんとなく、少なくとも私には似合わなくなっているような気もしていた。
急にガリガリとレコード針が音を立てて曲が止まった。故障かしら?と思わず彼の顔を見た。頬を寄せる彼のいつもは見えない顔を見た。彼は私の知らない顔をしていた。子供のようで、齢を重ねたようで、笑っているようで、泣いているようで、ただそのどの言葉を当てはめても、ひたりと彼の目は私に注がれている。
私は私からキスをした。すると彼は、情熱的に答えてきた。幼くもあり、老練でもあり、冗談のようでもあり、哀しくもあり。私がその形容詞を取りあぐねていると、彼が急に唇を離した。そして、今度ははっきりとその形容詞の中から悲しいという言葉が取れる顔した。
「いやだった?ごめんなさい」
「いえ、そうじゃないんです、ただ?」
「ただ?何?」
「だからそうじゃないんです、ただ?」
「ただ、何?」
執拗に答えを求める私に彼はとても戸惑っていた。けれども覚悟をしたように
「キスをしたら、貴女がもっと欲しくなるから、貴女はきまぐれややさしさから僕につきあってくれるだろうけれど、いつかは飽きてしまうだろうから、けれども僕は貴女をあきらめられなくなるから、そんな僕はとても子供で貴女には相応しくないから、それでも僕は貴女を求めてしまうから、だか」
私は彼の唇を塞いだ。彼はまだ戸惑っていたけれど、直ぐに積極的に私の唇に応える。
「だから、」
唇が離れてなおも続きを言おうとする彼の唇をもう一度塞ぐ。今度は迷わず彼が応える。人目を憚らない情熱に浮かされたように。
「……だから、飽きるまではこうしていればいいじゃない」
言葉の続きを私がひきとった。その言葉に『貴方が飽きるまで』とつけなかったのは、私の小さな意地だ。きっと飽きられるのは私だから、それでもわたしは貴方が欲しくなり、あきらめられなくなり、求めてしまうから。
「貴女が飽きるまでは?」
きっと飽きることはないだろう、私は。
「僕は貴女が飽きても、離しませんよ?それでも?」
彼はまだ若いから、自分が飽きるという事を知らないから、そんな風に言えるのだ。私の不安も弱さも知らずに、だから。
その言葉への答えの代わりに、私は彼に口づけた。
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09月25日(日)
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