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マシンガン★リーク
by 六実
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■つめこみ
それでも授業はいつも通り進んで。でも隣の大真がいやにいちゃいちゃ僕に触ってくる。いやだ、よるな、あっちいけ、と小声で言うと「んもうアナタったら照れ屋さん(はあと)」……神様、僕何かしたんでしょうか?げっそりしながら午前中の授業が終了。そして給食の時間。そのまま大真とは向かい合わせで班を作る。給食が配られて「いただきます」。目の前の大真はいそいそと「僕の」トレイに手をのばして、シチューをすくって
「はい、アナタ、あーん」
やっぱりそうきたか。
「ひゅーひゅー、アツいねお二人さんー」
「やだもうホントの事いわないでよ、いかほどー!」
いいから、もうそのモノマネはいいから。しかも微妙に似ていて結構笑えるのも腹が立つ。僕が意地でも食うもんかと口をつぐんでいたら、
「もうアナタったら、好き嫌いなんてコドモみたいー。じゃあ、アタシが代わりに食べてあげるね」
言うが早いか、大真は僕のプリンをとって高速で食べた。しかも一口で!待て、なんでそこに行く!と言おうと口をあけたら、シチューのスプーンを押し込まれた。
「どう?美味しい?」
なんなんだ、これは。
もしかして新手のイジメなのか!しかし黙ってイジメられる僕じゃない。こうなったら大真のプリンを食べ返してやれ!と思ったけれど、そのプリンはもう無かった。お前いつの間に喰ったんだ!
大真はそのままそのスプーンで、自分の分のシチューを食べ始めた。僕が唖然と見つめていると
「やだ、今更か間接キスで照れないでよ。キスなんてしょっちゅうしてるじゃなーい」
してないしてないしてない!……ちゃぶ台返しをしたい衝動にかられた。しかしこれは給食のおばさんが心を込めて作ってくれたもの……大真、今に見てろ?この仕返しは必ずしてやるからな!
という僕の念を大真が察したのか。
放課後、大真はさっさと先に帰ってしまっていた。今日は大真の塾のない日で、そんな日は必ず僕と一緒に帰るのだけれど、それで帰りもこの調子で「いいふうふ」をやられるのかと思うとげんなりしていたのだけれど、大真はあっという間にいなくなった。……これでもうこの悪ノリは終わりって事だよな。やれやれ、今日は特につかれてしまった、と帰ろうとしたら、クラスの女子につかまった。
「ちょっと、ゆかり君掃除当番!」
「え?だって今週僕じゃないよ?」
「大真が『代わりに夫がやるから』って言ってったのよ」
……まだ遊びは終わってなかった。いやもう遊びじゃなくて、すっかりクラスの皆にも浸透しているってどういうこと?
「こういうの妻の家事放棄って言うんだよね」
同情のまなざしで、ホウキを渡された。これが本当の家事ホウキ……大真ならきっとそう言うだろう。
そして僕はひどくむしゃくしゃしながら、家路についた。今夜は僕の誕生日だから、お母さんがケーキと僕の好物を作ってくれるはず、そしてお父さんはプレゼントをくれるはず。もう今度こそあの悪ノリは終わったのだ。あとは楽しいことを考えよう。
しかし家の前に立ってから、一瞬、嫌な予感がした。……こういう時の予感はたいてい当たるんだけれど、今日ばかりは当たらないでいて欲しいけれど。
その時ドアが開いた。
「アナター!!おかえりなさーい!」
これが目的で先に帰ったのか!しかも丁寧にエプロンまでして!後ろでお母さんが笑っている。……ああもうお母さんまで懐柔済みか!
もうその場で布団しいて寝たい気分になってきた。反論する気もおこらない。
「アナタ、先にごはんにするそれともオフロ?」
大真はこれがやりたくてしかたがなかった、っていう顔している。うきうきしている。なんで僕の誕生日になのに、大真が一番楽しそうなんだ。
「それとも……」
それともなんだ!なんでそこでシナを作るんだ!思わせぶりに区切るんだ!でも「それとも」の先は自分でもよくわからない。けれどもそれは聞いてはいけないもののような気がしていた。
大真は続けた。
「先にごはんにするそれともオフロ?それとも……げ、え、む?」
「は?」
「やっぱりゲームだよなー!ゆかり!DS対戦しようぜー!」
……そ、そうか、ゲームか。
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11月22日(木)
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