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マシンガン★リーク
by 六実
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■菊泉(北埼玉地酒紀行)
「こんどはほめているんだから、ちゃんと聞けよ」
「そっか」
そんな風に自分自身の未来を考えているデイモンをビリーは素直に「えらい」と思ったのだ。けれども早すぎるとも思った。だって、俺達はまだ老いるには早すぎるじゃないか。それを口にすると、デイモンの決意を引き止めることになるからビリーは敢えて口にはしなかった。それを口にすると、彼との別れを惜しんでいる自分に気づいてしまうから、ビリーは敢えて口にしなかった。だから、ひとこと「えらいな」とだけ言った。
えらく早すぎはしないか、
えらく寂しくなってしまうのではないのか自分は、
それでもお前は決めてしまったのだな
「お前もそろそろ考えろよ?お前だっていつまでも若くてピチピチで船の若いスタッフにきゃあきゃあ言われて謂れのない恋の鞘当に巻き込まれてお金持ちの有閑マダムに今夜あたしの部屋にきてちょうだいってチップを渡されたり屈強なそっち趣味の水兵のお兄さんに言い寄られたりするわけじゃないんだからな」
「お前、今、余計なこと沢山言ってないか?」
「まあまあ。ま、結局は俺達も変わっていくって事なんだよ。月日は流れて歳はとる。この船に乗るお客はいつも違うし、あの水面の白い泡だって戻っても同じ泡じゃないんだ」
変わらないものなど、何もないのだから。そうデイモンは締めくくった。その顔が少しさびしそうに見えたのは気のせいだろうか。「変わらないものなどない」と言うものよりも早く、変わろうとしていくデイモンが、少しだけさびしそうに見えたのは気のせいだろうか。
ビリーはそれに反論した。唯一それだけには反論した。
「変わらないよ」
「え?」
「だって、お前がお前であることも、俺が俺であることも、変わらないじゃないか」
はっと、デイモンが顔を上げた。夕陽に照らされた顔が驚いた風で、けれどもその顔から、ビリーが感じていたさびしさが、すっと消えた。
「そっか」
デイモンがまたうつむき、目線を白い泡に戻した。そこに見えるものは、目に映るものは今見たものと同じものではないけれど、
「そっか」
きっと顔を上げて、沈む夕陽に目をやった。そこに見えるものは、目に映るものは変わり行く移り行くものだけれど、
ビリーはデイモンの肩に手を置いた。そしてデイモンと同じように沈む夕陽を見た。夕陽はゆっくりと、水平線に沈んでゆき、残されたオレンジの空を吸い込むようにして、夜の帳をおろしていった。
++++++++++
(隊長!ここにみらゆか者が隠れていました!)(隠れていたも何も)
船、というのは旅立ちの記号でもあるし、新年にもふさわしいよな、と冬コミ帰りに水上バス乗りながら思った次第です(無理やりこじつけたとも言う)(笑)。
01月02日(火)
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