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マシンガン★リーク
by 六実
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■東京迷子
 また紫君が遠吠えをしました。ベランダの手すりに器用に乗り、月夜に向かって吼えています。
「あいつが吠えるの、いつも満月の夜なんだよな」
 言われてみれば、いつも紫君は夜空のまんまるな月にむかって吠えるのです。その遠吠えはどこか寂しそうで……
 ぎゅ、と旦那様が後ろからあすかちゃんを抱きしめました。その寂しいと言う言葉を敏感に感じ取ってくれたのです。
「あいつにもなんか理由があるんだよ」
 真冬の夜空に煌々と輝く満月を背負い、暗闇よりも深い漆黒の身体のしなやかな獣が吠える。開け放った窓からの寒さも忘れて、あすかちゃんはそれを美しいと思いました。


 しなやかな野生よ、おまへはそらにむかってはかけあがれないのだから


 旦那様がぎゅうっとあすかちゃんを更に抱きしめました。寂しいとあすかちゃんが思った分、抱きしめました。
「寒い」
「……そうね、もう寝ましょう、紫」
 あすかちゃんがそう声をかけると、紫君はぴくん、と耳を立てあすかちゃんと旦那様をみつめ、そして何事もなかったようにしゅたっと、手すりから降りて部屋に戻ってきました。
 あすかちゃんは紫君を抱きしめました。紫君はちいさく、猫のような泣き声を立てました。
「あったかい」
「ずるいずるい」
 旦那様はあすかちゃんを押しのけて紫君を抱きしめました。
「おお、あったかいあったかい」
 まんまるな月が少し傾き、マンションの窓からまっすぐに光が差し込んできました。それに照らされた黒い獣と、それを抱きしめる旦那様、それもまた美しいと、あすかちゃんは思ったのでした。




++++++++++
・マンションのオーナーは涼さんです。
・マンションの管理人はしぃちゃんです。毎日廊下の掃除をしてくれます。紫君は何故か管理人さんにだけはなつきます。
・夢乃君は「回覧板が似合いそう」という理由だけで登板しました。
・柚長は柚長以外思いつきませんでした。
・続きはありません。
・という訳で六実さんの中では引き続き美城れんがアツイのだと思ってください(え?そこから派生?)

11月26日(日)
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