ID:26167
マシンガン★リーク
by 六実
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■安藤平三郎
 物事をすべて「他人から」「他人より」という視点でしか見られなかった平さん。他人に対しても自分自身に対しても。自分自身に対して他者との比較でしかモノが計れなかった、判断できなかった平さんは自分自身を手に入れていなかったとも言えると思います。相対評価でしか見られない、自分自身を自分自身によりどころとすることができない人。まさに偏差値教育の弊害です(違)。でも私はその平さんの相対的にしか物事がみられない、というのにものすごく感情移入してしまいました。感情移入するってことは自分自身がそうだからなんですが(うわ)。正直な話、絶対的に物事を見れることの方が少ないと思うんです。人はおのずと何かと比較するところで自分自身にですらあやうい自分自身の居場所を確かにしているのだと思うのですが。その平さんとは反対に絶対的な「愛」を手に入れたローリーとシルビア。相手を「他人から」「他人より」という相対的な視点ではなく、ただ相手自身をまっすぐに絶対的に捉えていたローリーとシルビア。それはとても強い力でとても正論だと思うのですが、けれども相対的な視点でしかみられない平さんを決して私は悪いとは思えないんです。
 最後ぐらい少しは役に立っただろう、で死んでしまった平さん。違う、平さんがすべきことは「少しは役に立つ」だなんて捨て駒(私はそう思う)発想ではなく、石にしがみついてでも今度は自分自身(絶対的な)を手に入れる事だったと思うんです。俺は負け犬だと絶望する平さんを「人として正しい事をするようやりなおせ」と言うローリー。違う、確かに平さんは結果として人として正しくない事をしてきたけれどその行動を質す前に平さんが平さん自身(絶対的な)を手に入れる事を見守ってあげるべきだったんだと思うのです。間接的には絶対的な自分自身を手に入れた結果、「少しは役に立つ」事を選ぶ訳であり「人として正しく」やりなおすに繋がっていくのだと思うのですが、微妙に斜め30度ぐらいずれてしまったような気がします。平さんの死に際(というか死んでしまったこと)とローリーがコートをかけながらかけた言葉がどうしてもひっかかってしまって、それゆえにとてつもなくやりきれなくなってしまったのです。
 目を見開いたまま死んでいった平さん。何かを残したようで何かに縋ったようで。あれはどう考えても「少しは役に立って」満足して死んでいったように見えないんです。だって、やりなおせなかったんだもの。やりなおせたのに、やりなおせなかったんだもの。

 小池作品の二番手男役の役どころっていっつも同じ(ある意味かわいそうな人)で、今回もわかりやすーな役柄だったのですが、今回はあまりにもその役に救いがなかったように思えます。私が見た中ではイコンの稔さんの役は最後は妻と一緒にやり直すという救いがあったし、カスミラの樹里さん(東宝版)の役は自ら手を引くという意思があったという意味で、当人が選んだ道だからという救いがあった。救い、とは違いますが薔薇の封印のミハイルもある意味かわいそうな人なのですが、あれはあれで悪として散っていった美学(は?)というか物語りの中でのあるべき帰結があったと思うし。でもヘイワードの場合はそういう救いも帰結もなかった。なんというか途中でバッサリぶった切られた感すらあるのです。

 割と予備知識なく観たので、平さんが死んでしまうのは知らなかったんです。で、それを踏まえて二回目を観ると、ローリーとメアリー・アンとの場面が最高に切なくなってしまいました。

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12月03日(土)
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