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マシンガン★リーク
by 六実
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■甘い甘い多層構造
この二つの『気付き』、最初は陳玄礼に言われたが故、と思っていたのですが、実際は楊国忠自身が自分の目で見て判断し、その結論に至ったのではないかと思っています。
楊貴妃と一緒にいた皇甫惟明に強く出る楊国忠を、最初は「うわ、陳玄礼に言われたからってすぐにその態度っすか!わかりやすいひとですな!」と半笑いだったのですが、単純に陳玄礼に煽られたというより、あえてわかりやすく皇甫惟明に対して強く出たのではないかと。危険と判断するやいなや、即手を打った。敢えてああやって芝居がかって出ることで、皇甫惟明への牽制どころかすでに死を示唆してたとすら思え(考えすぎ)。新公で観たゆかりくんの国忠がこれとはまったく反対の作り方だったので(じんわりと陰湿に策を弄しているような国忠でした)、逆にここの立樹国忠の芝居が「敢えて」という風に思えてきたのです。二つの『気付き』を得た楊国忠は一気に権力の階段を昇る。ここの楊国忠の敢えて出る強さ、皇甫惟明を敵とみなしてからの行動の早さ、そしてその奥にある思惑。この次の場面にイキナリ宰相になっていても「ああ、確かにそれぐらいのイキオイがあったよ!」と思わせるような(多分に思い入れが強くなっております)。
余談ながら真飛皇甫惟明は、その国忠の牽制に既に己の死を悟ったのではないかと思っています。ちなみに博多版の涼皇甫惟明は悟ってはいません。これをつきつめると俺的花舞う長安ができあがるのですが、それはとりあえずこの辺に置いておきます。
博多→ムラ→東宝で一番わかりやすく変わったのが、三姉妹と踊り戯れるところなんですが、ここもまた三姉妹を、「女を利用している」楊国忠の場面なんじゃないかと思っています。栄光を手にして喜ぶ三姉妹を完全に見下していた。ただ調子を合わせているだけだった。そしてそこに続いて楊貴妃に「皇甫惟明の死」を告げに行く。ここは楊貴妃が「利用された」と気付く場面なんだと思います。私、割と上手からの観劇が多かったので、ここはしぃちゃんの顔が見えない事が多かったのですが、それゆえに楊国忠を見る楊貴妃の顔がすごく印象的でした。皇甫惟明の死を告げられて、信じられないと楊国忠を見て、「皇甫惟明を死に追いやったのは目の前にいる楊国忠なのでは?」とはっとする楊貴妃、そして高力士に「みざるいわざわるはなさざる」と言われて、もう一度すがるように(血縁者である)楊国忠を見るのですが、そこではっきりと絶望する楊貴妃。やはり自分は人形にすぎないのだ、この男(楊国忠)も私を人形として操っていたに過ぎないのだと。それを肯定するかのように、いやもはや貴妃のことなど目にも止めないよううに、すっとその場を辞していく楊国忠。
それでは楊国忠と皇帝の関係はどうであったのか?なんですが、やはりその後、皇帝の側に楊国忠がいなかったことが(それが脚本的に意図したことではないとわかっていても)私にはキーワードです。忠誠を失った、皇帝を見下している、とまではいかないと思うのですが。この時点で皇帝は皇帝ではなく一人の人間になってしまっていたわけですから(昨日のテキスト参照)、楊国忠から見れば仰ぎ見る対象ではなくなっていた、いやむしろ自分もまた皇帝に近い地位まで昇りつめていたのだから。
ただ、楊国忠が権力を欲しい侭にした悪吏かというと、そうではないと思うのです。これはしぃちゃんの特性からかもしれないのですが、立樹楊国忠からは悪の匂いがしないんです。皇帝が皇帝ではなくなった、ならば誰が政務をとるのだ?私しかいないではないか。忠誠心でも義務でもなく、ただ必然として国を動かす権力を手にしていた男、楊国忠……これはすごく面白い役造りの方向だと思いました。
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12月24日(金)
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