ID:23473
武ニュースDiary
by あさかぜ
[6277618hit]

■「ELLE MEN 叡士」2017年4月号・3
彼は本当に覚えていないのだ

人は金城武についてあれこれ取りざたするが、
一番多いのは、おそらくその謎めいたところについてだろう。
神秘的とラベルを貼られる者は、芸能界でいくらもいない。
もしも超然としつつ、それでもなおスターの輝きと人々の関心を維持し、
さらには姿を現すたび注目を集めようとするなら、それは一種の賭けだ。
これは図ってできることではないし、真似できるものでもない。

長いこと、金城武に関するニュースは極めて少なく、あっても映画関連のものだけだ。
初期に台湾のバラエティ番組に出演していた以外は、その種の番組には一切出ていない。
スターの動向やエピソードの逐一が、SNSを通じて天下に知れ渡る時代に、
彼は世界の外に独立する真空のような存在である。

知らない人と話すのは嫌いですか、と尋ねてみた。
彼は即座にはっきりと頭を振った。
「他の人はぼくを見て、知ってると思うけれど、ぼくの方は相手が全然誰だか知らない。
ぼくは多分常にスターでいることができないのだと思う」
そして、スターであることは疲れると言う。

「そのスターは、実はぼくではない。誰であるかはぼくも知らない。
“彼”は人々が作り出した人物なんです」
彼はいつもこう思っている、
自分がミステリアスなのではなく、人が好奇心がありすぎるだけなのだと。

以前、こんな記事があった。
金城武が日本進出を決めたとき、マネジャーが彼に言った。
「もし、今大通りの真ん中に屈託なく寝転がってみたいと思うなら、
時間を無駄にしないように。
すぐにそういう自由なチャンスはなくなるでしょうから」
この忠告を彼は覚えていなかったが、生活は確かに「一変しましたね」。

「覚えていません」「知りません」は、彼がインタビューを受けるとき良く口にする言葉だ。
「10年前にぼくが話したということを言われると、
いつも、それ、ぼくが言ったのか、と思うんですよ」
昔出演したバラエティ番組や、受けたインタビューを見ると、
こいつは誰、どうしてこんな話をしているんだ、
なんでこんな顔つきをしているのか、と不思議に感じる。
友人のスターたちとその感覚について話したとき、1人が言った。
「それは全然別の人間なんだよ」。

「本当にそうだと思いましたね、”彼”は自分では全然ないんだ。
昔はただ仕事として、知名度を上げるためにレコードの宣伝に行った。
あの頃はとにかくどんどん番組に出なくちゃという風潮だったので、
できるだけそれに沿って頑張った。取り上げてもらえますからね。
そういう環境の中ではみんながそうだったから、
そうじゃなくちゃだめだと思い込まされていた」

後になって、彼はずっと自分自身を分析し、周りの環境を理解しようとした。
「人がたくさん話をし、たくさん説明すれば、誤解する人は本当にいなくなるのだろうか? 
露出が多ければ、やっぱり誤解はある」
彼は少しずつわかってきた。
「それで、そういうことにあまり積極的でなくなりました」

取材当日の午後、彼は「喜歓你(恋するシェフの最強レシピ)」の記者発表会に出席した。
周冬雨とステージに上がり、大いに語り、リラックスしているように見えた。
映画会社のスタッフは「金城武もこんなにたくさん話すことができるのか」と驚いた。
彼はやや困惑した笑みを浮かべると、言った。
「マイクを持ってて、話をしないとまずいでしょ」
「もし訊いてくれたら、取材なしでもいいですか、と言いますよ。
ぼくは得意じゃないから」

「いわゆる有名になることは、全然楽しくないんです。
でも、それであるから、大勢の仕事相手と知り合うチャンスがもらえる。
ピーター・チャン監督とかね。映像制作はもともと好きなことですし」

蔡康永が10年前に出版した本、
『那些男孩教我的事(あの男の子たちが私に教えてくれたこと)』に登場する第97番の若者は、
ファンたちの一方的願望によって金城武だと推測されている。
「彼の美しさは、息が詰まるほどで、地球人の美しさではない」

[5]続きを読む

05月05日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る