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武ニュースDiary
by あさかぜ
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■Esquire香港(君子雑誌)本文
金城武・現場

    

変化は確かにある

午後、日本は六本木のある静かなスタジオで、金城武と会った。
彼には一貫して神秘感と静謐な感じがある。
つまり他とは違った俳優であって、一種、ちょうどいい距離を感じさせる。
それと同様に、進んだかと思えば退く生き方が、この傑出した俳優は、
いったい心の置き方をどのように選択しているのか、ふと、わからなくさせる。

「ぼくにとって、状況というのは本来受け身であって、
実は俳優がそういうものなんですよね。
ここ数年、ぼくが急に活発になったように見えるでしょうけど、
それは、ちょうどいい時ということと大いに関係があるんです。

ちょうどいい時とは何かって?
つまり、全てのことがとてもなめらかに心地よく起きるということ。
台本を手渡され、どんな出演者やスタッフかを知り、
参加したいという強い気持ちが湧いてきた。
だから、すべてがとてもうまく進んだんです。
ピーター・チャン監督と前にご一緒した「如果・愛」のように、
互いにもう深い信頼があったし、スタッフも知っている人たちだったし、
基本的に「投名状」は、全く迷うことなく参加を決めた作品でした。

今、すっかり大人になったからかなあ、他の人には、
ぼくが仕事や将来に対して前よりずっと積極的になったと映るでしょうけど、
実際、自分でも、生活に対する考え方がちょっと変わったのがわかります。
でも、どんな変化なんだろう? 
具体的に言葉にすることはできないけど。
それでも、ぼくの本性はやっぱり同じで、
仕事以外では、自分のプライベートな時間をとても大事にしていますよ」

金城武はそう言うと、かすかに微笑んだ。

インタビューは、表紙写真の撮影の後で行なわれた。
音楽さえ流れない、完全な静寂の中で、カメラマンと大勢のスタッフは
てきぱきと仕事を進め、全てはきわめて快適に終了した。
そのかん、金城武はカメラマンに時折希望を言ったり、
ポーズの相談をしたり、あるいは意味深長な笑顔を返したりするだけだった。
そして今日のインタビューの間、彼の顔にはずっとこの微笑が浮かんでいた。

価値観が揺らぐかどうか

簡単に言ってしまえば、映画「投名状」は女を漁って友を裏切る話である。
道義の価値を追求するというテーマからは、
いろいろなストーリーの映画が作れるだろう。
武侠映画にすることもできるし、宮廷秘史もありうる。
渡世の男の話や政治闘争物もありだ。
そして監督ピーター・チャンが撮ったのは戦争映画だった。

金城武もこの映画を戦争映画ととらえている。
だが、最も激しい戦闘は荒野の戦線にではなく、1人1人の人間の心の奥深くにある。
自分がずっと守り通してきた価値観が崩壊するのをまのあたりにしたとき、
搾り出される叫びなのだ。

「戦場では、殺さなければ殺される、結果ははっきりしています。
でも、『投名状』で経験したのは、心の闘いでした。
自分がずっと信奉してきた価値観の崩壊に直面すること、
生き延びるために、人間性の多くの純真で善良な部分がキリ捨てられること、
こういうことが僕の心を激しく揺さぶりましたし、
人がこの映画を見るときは、きっとそういうやるせなさ、
時代のせいで、誰もがそうせざるをえなかった選択を感じ取ると思います。

けれど、それは無情とは違う。
「投名状」の重点は人間の感情に、男同士の道義、男女の愛情、
昔から変わらず存在する本物の感情、
逃げ場のない状況で生じる激しい衝突にあるんです。
こうした内容は画期的で、古今内外を問わず、観る人の共感を呼ぶでしょう」

では、あなたは人と人の間には道義があると信じているのですか、と私は聞いた。
金城武はじっと私を見ると、軽くうなずいた。
落ち着いたしっかりとした表情だった。

「『投名状』の世界では、3人の主人公が乱世を必死に生きようとします。
3人は他の人間の血で契りを結ぶんですが、その大きな理由は、
個人の力量には限りがあり、手を組めば、いい結果を生むことが多いからです。

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11月16日(金)
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