ID:23473
武ニュースDiary
by あさかぜ
[6277743hit]

■夢を追う歳月C
心楽しいときのみ、命は無限の可能性を持つ

「昔は不公平と思うことが多くて、気持ちがふさいでいました。
今はそういうふうには思わなくなりました」
体のラインがリラックスして、すっきりした笑顔になる。
「本当はぼくは、すごく悲観的な人間なんです」
何の含みもない言い方で、
まるで自分には関係ないことを話しているかのようだ。

「いろんなことに自信が持てなくて、いつも構えてしまう。
すごく心配性なんです。
ずっと変なことを考えていて、
いつも長く生きられないんじゃないかと思っている。
わざわざそう考えるんじゃなくて、自然にそういう感じがするんです」
言い終わると、照れ隠しのような、
しかしストレートな笑い声を響かせた。

「でなければ、ぼくがある女の子を好きになったとしても、
いつもマイナスのことばかり考えてしまいます。
いいや、長く一緒にはいられないんだものって思う。
あるときなんか、あまりいろんなことが自分の予想を越えてしまって、
怖くなることもあります。
こんなだと、きっと自分は傲慢になってしまうから。
ぼくは傲慢な人間になってはいけない。
それは人をすごく嫌な気にさせます」
その話は本音から出ていた。

「でも、今はずっとよくなったんです」
と、ふっと息を吐いた。
「結局は、楽しいことが1番大切。
楽しくない人は、扉を全部閉ざしてしまう。
自分自身が心が開けて楽しいときに、
命は初めて無限の可能性を持つんです」

金城武の声は依然として静かだった。
1つの若い生命と、その複雑な心の過程。
彼は言う、いつか、大草原を手に入れて、
そこですべての動物達が自由気ままに暮らせたらいいと。
動物と話をしたい。彼は人と動物は通じ合あえると信じている。
彼は言う、来世では人にはなりたくない、なぜなら辛すぎるから。
人には喜怒哀楽があるために。

ならば。
「動物がいい。空を自由に飛びまわるトビに。
自分が一体どんな人間なのか、ぼくには実はよくわかっていない」
と、微笑んだ。
「ぼくは悪魔、天使になりたいと努力する悪魔ですね!」
彼は言った。   (完)
(文・許麗玉/楊明編『逐夢歳月』幼獅文化事業股イ分公司刊/1996.4)


BBS  18:15
04月02日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る