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武ニュースDiary
by あさかぜ
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■香港「JET」4月号の記事1
「冒険王」(チン・シウトン監督、1996)での女装は、
チャーリー・ヤンとの幼い初恋のような交わりと並んで、
今日再び味わってみるに値する一幕である。
その濃い眉とクラシックな男らしい美貌では、
あでやかさが微塵もないのは予想のうちとはいえ、
アジアのジョニー・デップと称されたのはむべなるかなと思わせる。
女装したジャック・スパロウみたいな感じなのだ。

非主流文芸作品での彼は、
特にウォン・カーウァイ映画(1997年のエリック・コット監督「初恋」を含む)での彼は、
いつものんびりと朴訥な感じで、笑うとちょっと間の抜けた感じがあり、
要するに彼はまさに愚直で偏屈で楽観的な変わり者だがいい奴に違いないと思わせる。
ちょうど「世界の涯てに」(リー・チーガイ監督、1995)の、
不治の病のケリー・チャンを連れて、人生の希望を探すモンゴル人の青年、
ナーハオチュンのように。

「アンナ・マデリーナ」(ハイ・チョンマン監督、1998)でも、得意の片思いの青年に扮している。
そういった役はうまいが、劇中小説「侠侶叉蛋」では彼の本来の楽しい一面も見ることができる。

さらに「ラベンダー」(イップ・カムハン監督、2001)のエンジェルは、
まさに彼本来の持ち味で演じている。
およそ、人間界に落ちてきた天使を演じてこのような説得力を持ちうる俳優は
両岸三地に何人もいないだろう。

リー・チーガイと再び組んだ「不夜城」(1998)に至って、
ようやく血の通った人間に最も近い役にめぐり合う。
日本に住む中国人ヤクザで本物の男の役だ。

すぐ後の「君のいた永遠」(シルビア・チャン監督、1999)のラム・ホークァンが
ジジ・リョンに求婚するシーンと、カレン・モクが彼に告白するシーンで、
彼は「金城武は演技がうまい」という証拠を公に提出することになる。
既に、自分の持ち味だけで演じる俳優から性格俳優へと変身していた。
金城武とは全然別の生きた人間――
仕事にも恋愛にも失敗し、異国で落ちぶれて旅行ガイドになる、
心のままに生き、愛にひたむきな男さえ作り上げ演じることができるようになっていたのである。

引き続いて、「ウィンターソング」(ピーター・チャン監督、2005)のリン・ジエンドン、
そして「傷だらけの男たち」(アンドリュー・ラウ、アラン・マック監督、2006)の丘健邦(ポン)は、
パートナーに裏切られる役だが、
その癒しがたい心の傷は顔だけでなく、歌やその肉体にしみこんでいた。

彼が時代劇の衣装を身につけると、普通とはちょっと異なる男気がある。
「ミスティ」(三枝健起監督、1997)の若侍にしろ、
「LOVERS」(チャン・イーモウ監督、2004)のジン捕頭にしろ、
「ウォーロード」(ピーター・チャン監督、2007)のジャン・ウーヤンにしろ、
はたまた「レッドクリフ」二部作(ジョン・ウー監督、2008、2009)の諸葛孔明にしろ、
「捜査官X」(ピーター・チャン監督、2011)の徐百九にしろ、
どれも、100%過去に生きた人間とは言えない。
あまりに現代的すぎるのか?
そうとも限らない。

要するに、時代衣装の金城武の繊細な優雅さは、彼だけのものであって、
その気質は時空を超えている。
時代劇か現代劇かだけではない、
「リターナー」(山崎貴監督、2002)の未来から来た人間にもなれる。
果ては天国からの使いにもなれるのであり、
「死神の精度」(筧昌也監督、2008)では死神・千葉に変身した。
人にもなれるし、人の世の外から来た者にもなれる。
これを演技と言わないのであれば、どうぞ、これからも、彼にはどんな賞も与えず、
いやそれどころかノミネートさえしないということを続けていてください。


   BBS   ネタバレDiary   15:30

03月31日(日)
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