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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■この予算をどう受け止めるか
最大の理由は、今回の予算が家計などへの「配る」政策に偏っていることだ。公費を元手にした子ども手当と高校授業料の無償化は家計が安心して消費に回してこそ効果が出る。そのためには、実体経済を支えるもう一つの主役である企業部門が活気を取り戻すことが必要だ。
企業が収益を上げなければ人々の賃金や雇用が低迷し、不安を抱えた家計の消費も冷え込む。鳩山政権は医療、教育、農業、運輸などへの参入を促す規制緩和や税制改革を通じ、企業の創意工夫を引き出す努力をもっとしてほしい。
公共事業費の大幅な削減も、日本経済全体で需要が供給を40兆円近く下回る現状でマイナスに働く可能性がある。誰が使うか定かでない過疎地の道路や橋は論外だが、渋滞解消など経済効果の高い都市部の交通インフラ、人口構造の変化に即応した保育所や介護施設などの投資は積極的に進めるべきだろう。
政府が閣議了解した10年度の政府経済見通しは、国内総生産(GDP)について、名目で0.4%増、物価変動の影響を除いた実質で1.4%増とした。名目、実質とも2年続けて大幅マイナスが避けられない09年度に比べて大幅な回復を見込む。
だが、今回の予算案だけで、この筋書きが実現するかどうかは心もとない。鳩山政権が近く出す経済成長戦略では、経済を着実に伸ばす青写真を明示してほしい。
来年度予算案へのもう一つの懸念は一段と悪化した財政状況である。
衆院選で民主党が訴えた「無駄の削減」は掛け声倒れだった。鳩山由紀夫首相は就任直後、マニフェスト(政権公約)に掲げた政策について、無駄の削減で「7兆円の財源は十分にメドが立つ」と明言したが、その言葉は実現していない。
公開の議論を通じて予算の必要性を洗い直す「事業仕分け」は無駄の存在をはっきりさせる手法として有効だったが、歳出削減につながったのは7千億円弱にとどまった。他の項目でも切り込みは思うように進まず「無駄の削減で公約を実施する」という前提は崩れた。
来年度は税収37兆円に対して国債発行が44兆円台と、第2次世界大戦直後の1946年度以来、初めて借金が税収を上回る事態になる。
中長期目標を早く示せ
「霞が関埋蔵金」と呼ばれる財政投融資、外国為替といった特別会計の剰余金や公益法人の基金返納などをかき集め、10兆円を上回る税外収入を計上して、首相が掲げた「約44兆円」の国債発行額目標に何とか収めたのが実態だ。
新たな借金と一時収入で、公約した給付策の帳尻を合わせる姿が長続きするはずがない。
1年後の11年度予算編成はさらに困難が増す。民主党の公約に沿えば10年度は半額支給だった子ども手当が満額になるなど歳出が膨らむ一方、「埋蔵金」の税外収入を得るのも一段と難しくなる。財政との兼ね合いで、公約した項目を本当に実施するかどうかをもう一度点検しなおす必要がある。
国と地方を合わせた長期債務残高は10年度末に862兆円とGDPの1.8倍に達する。日本の財政の持続性に金融市場が疑念を抱き、国債の金利が上昇するような事態になれば、財政運営はさらに苦しくなり、住宅ローン金利などの上昇で経済にも悪影響が及ぶ。
鳩山政権は中期の財政見通しを来年前半に出すというが、あまりに悠長ではないか。歳入と歳出の両面から財政を立て直す道筋を、もっと早く打ち出すべきだ。
12月26日(土)
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