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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■生活文化の基礎中の基礎が崩壊しつつある
6年後の2015年には団塊世代のすべてが前期高齢者になり、認知症の高齢者は今の150万人強から250万人に急増するとみられる。また独り暮らしの高齢者は570万世帯と、全高齢者世帯の3分の1を占めるようになる見通しだ。
特に高齢化が加速するのは首都圏だ。15年までに高齢化率がどれだけ上昇するかの推計を県別にみると上から埼玉、千葉、神奈川の順となっている。夫に先立たれ十分な年金をもらえない独居女性や認知症を患っている人も念頭に、住まいの確保に取り組むのが優先課題になる。
その際はできるだけ自宅で暮らせるように配慮するのが基本だ。公営住宅や旧公団住宅をバリアフリー化したり、介護者がいるケア付き住宅に改装したりするのを急ぐべきだ。経済対策を兼ねて国の財政支援があってもよい。市区町村の主導で日常の面倒をみたり安否確認したりするボランティアも育ててほしい。
高地価のせいで老人保健施設など介護保険が適用される施設も足りない。安全基準を満たし高質のサービスを提供する民間の有料老人ホームの建設に税制支援するのも一案だ。
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5、老人施設で焼死 受け皿の貧しさが招いた
2009年3月22日 新潟日報
群馬県渋川市の高齢者向け住宅「静養ホームたまゆら」で火災が発生し、入居者十人の命が奪われた。
入居者の多くは東京都墨田区などから移った生活保護受給者だった。
犠牲者は体が不自由なため、自力では逃げられなかった可能性が高い。痛ましいと言うほかない。
出火元は焼け方が激しい別館とみられる。防火体制や避難誘導など、安全管理面で問題はなかったか。
県警は運営者のNPO法人から事情聴取を始めた。出火原因を特定するのはもちろん、惨事の背景を丁寧に調べてほしい。
老人を入居させて食事などを出す施設は、老人福祉法で有料老人ホームとして都道府県に届け出なければならない。だがこの施設は届け出をしておらず、県が調査に乗り出す矢先だった。
有料老人ホームとなると基準を満たすためのコストが掛かり、行政からも監督される。それを嫌って無届けにしておく施設も少なくない。
県は二年ほど前から「たまゆら」が無届けとの情報をつかんでいた。もっと早く調査していればこんなに多く犠牲を出さずに済んだのではないか。
なぜ東京のお年寄りが地方の無届け施設に入居していたのか。背景には、東京などで高齢者向け介護施設の絶対数が不足している現実がある。
だが政府は介護費用を抑えるため、「施設から在宅へ」という方針を取っている。中でも地価の高い東京では新施設の建設は進まないのが実情だ。
行き場がない低所得者の受け皿の一つとなっているのが、「たまゆら」のような地方の施設である。施設側には、生活保護費から確実に利用料を差し引けるというメリットがある。
墨田区は「たまゆら」の売り込みに応じ、区内の生活保護受給者を紹介していた。今回の惨事は介護行政のひずみを浮き彫りにしたといえよう。
四月には改正消防法施行令によって福祉施設の防火体制が強化される。二〇〇六年に長崎県のグループホーム火災で死傷者が出た件を受けたものだけに、今回の惨事には残念さが募る。
四月からは自動火災報知設備やスプリンクラーの設置義務が強化される。だが「たまゆら」のような規模では、スプリンクラーの設置は今後も対象外となる。「たまゆら」は小規模な建物を分散させる形になっていた。
高齢者の避難は時間がかかる。小規模施設へのスプリンクラー設置をもっときめ細かく進められないか。
無届けの施設の実態を把握し、行政の目が行き届くようにすべきなのは言うまでもない。施設の在り方そのものを問い直すことも重要だ。ひずみを放置したままでは問題は解決しない。
[新潟日報3月22日(日)]
03月23日(月)
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