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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■レスター・R・ブラウンの論考(2)
しかし、問題はそこで終わるわけではありません。レスター・ブラウンが述べているように、食糧用作物がバイオ燃料に転換されればされるほど、生産された作物のうち、食糧用にまわされる分が減ってきます。まさに、ガソリンスタンドとスーパーマーケットとの奪い合いになるのです。

食糧用に生産されるトウモロコシや大豆が減少してくると、世界の食糧価格が値上がりしてきます。そうすると、ただでさえ貧しい人たちが、さらに食糧を手に入れにくくなります。

(図3)
また、今回のレスターの論考には出てきていませんが、バイオ燃料への需要が増大していることから、ブラジルなどでは熱帯雨林を切り開いて、燃料用作物の作付面積を広げています。

森林を開墾して大豆畑にすることから、土壌が日の光を浴び、風にあおられ、土壌浸食が進んで砂漠化を引き起こしています。また、熱帯雨林を切り開くことから森林面積が減少し、生態系の破壊につながっ
ています。

森林の面積が減少すると、内陸部に降る雨が減ります。するとさらに森林が減っていくという悪循環が起きます。内陸部の雨が減ることが、さらに砂漠化を推し進めています。

(図4)
森林面積が減少すると、二酸化炭素の吸収量も減少しますす。すると大気中の二酸化炭素濃度が上昇してしまい、もともとバイオ燃料が目的としていた温暖化を悪化させてしまいます。

現在、特に、米国は原油価格の高騰から、日本やヨーロッパは温暖化への対策としてバイオ燃料を推し進めています。しかし、そのことが逆に、森林面積を減らすことによって、温暖化を加速しかねないのです。

このように、目の前の問題と目の前の解決策にそれぞれが飛びつくと、レスター・ブラウンが述べているように、全体として生産量を超える作物が必要なバイオ燃料の生産設備ができたり、温暖化対策のはずが、温暖化を加速することになったりしてしまいます。(個別最適化の集合は、全体最適化にはならないのです)

全体像を見たうえで、何のために何をどこまで進めるのか全体で調整をする必要があります。さもないと、それぞれがよかれと思ってやったことが、全体としては、そもそも守りたかったものを破壊してしまうということにもなりかねません。

最も必要なのは、目についた解決策に飛びつきたくなるのを「ちょっと待てよ」と抑えて、「いまよかれと思ってやろうとしていることは、想定していない影響を、別の場所や後世に与えないだろうか? この対策は何につながり、何に影響を与えるのだろうか? そもそも、この問題は、どのような要素のつながりが引き起こしているのだろうか?」と、一歩引いて、全体像をとらえようとすること
です。

いまお見せしたバイオ燃料のループ図は、システム思考のセミナーやワークショップでも使っているものですが、システム思考は、このような地球環境問題をはじめ、組織や個人の問題状況の構造を知るため、のちや他所に禍根を残さない真の解決策を考えるために、とても役に立ちます。

4月に、ビジネス向けと個人向けのワークショップを開催しますので、ご興味のある方、ぜひループ図などのシステム思考の基本ツールを身につけ、複雑さを増す社会の中で、変化に翻弄されるのではなく、変化を予期し、変化を創り出していく力を身につけていただけたらうれしいです。

(コースの詳細やお申し込み等は、以下のウェブサイトをご覧ください)

03月02日(金)
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