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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■雲の上の総理
景気の一段の落ち込みを防ぐためには予算の精査と並行し、メリハリをつけた経済対策が必要となった。だが首相や菅直人副総理・国家戦略相が予算編成や税制改正で先頭に立って指示をとばすような場面は見られず、経済財政政策の司令塔が誰なのかはいまだにはっきりしない。
一方で民主党は16日に小沢一郎幹事長の主導でまとめた予算や税制に関する重点要望を提出した。ガソリン税の暫定税率分の税収確保などに道筋をつけたが、「政策決定の内閣一元化」という原則は有名無実化した。小沢氏の影響力の大きさを改めて印象づける結果となった。
政府の重要人事でも首をかしげるような対応が目立った。鳩山内閣は日本郵政の新社長に斎藤次郎元大蔵次官、人事院総裁に江利川毅前厚生労働次官を充てた。
首相は能力本位の適材適所であれば次官OBの起用は問題はないと説明した。だが「脱官僚依存」を強調してきた従来の主張とは相いれず、「天下りや渡りの省庁あっせんを全面的に禁止する」との方針が崩れる懸念が出ている。
政権交代があれば、国政にある程度の混乱が生じるのはやむを得ない面もある。しかし重要な政策判断で迷走や議論の停滞が目立つのは、詰まるところ首相が十分に指導力を発揮していないからではないか。
なかでも深刻なのは、外交や安全保障をめぐる基軸が定まっていない点である。
鳩山内閣はインド洋での給油活動を来年1月の期限切れで中止する。アフガニスタン復興への資金援助は大幅に上積みする方針だが、海外の評価が高い人的貢献策の打ち切りは国際的なテロ掃討作戦からの離脱と受け取られかねない。
沖縄県の米軍普天間基地(宜野湾市)の移設問題をめぐる政府内の対応ぶりは危機的でさえある。名護市辺野古地区への移設という日米合意の見直しで揺れ続けた揚げ句、結論を来年に先送りした。
首相は11月に来日したオバマ米大統領との会談で「トラスト・ミー(私を信じて)」と発言した。だが翌日には「日米合意が前提ではない」と語って周囲を驚かせた。
12月17日にはコペンハーゲンでクリントン国務長官に新たな移設先を検討する考えを伝え、記者団に「十分に理解していただいた」と説明した。クリントン長官は帰国後に藤崎一郎駐米大使を呼び、現行案の履行を改めて促す異例の展開となった。
日米同盟を揺さぶる
国際情勢を踏まえた政策の見直しは主体的に取り組めばよい。しかし総合的な安全保障の戦略もないまま日米合意の撤回に動けば、長年培ってきた同盟関係を危険にさらすことになる。
民主党は対中関係の強化に動き、ここでも小沢幹事長の存在感は大きい。だが外交は二者択一ではなく、強固な日米関係がアジア・太平洋地域の安定の基盤となるはずだ。
鳩山内閣の歩みを振り返ると、連立を組む社民、国民新両党の主張に振り回される場面が目立った。与党の緊密な連携は大事だが、民主党の基本政策をゆがめてしまっては本末転倒である。
政権運営には首相の偽装献金問題や小沢氏の西松建設からの巨額献金事件も影を落としている。新体制になって党首討論が実現していない原因の一つは、野党から疑惑を追及されたくないとの意識が働いているためとみられている。
来年夏の参院選をにらんで与野党の駆け引きが強まるのは避けられないが、疑惑の解明や政策論争から逃げていては政治の停滞につながるだけだ。それでは鳩山内閣への期待も失望に変わってしまう。
12月24日(木)
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