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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■改正正農地法が成立 企業参入へ規制緩和?
このうち、今回の法改正が「平成の農政改革」とされる最大の根拠は、法律の目的から「自作農主義」が削除されることだ。確かに、これは、一見、大きな転換のように映る。農地法の基本理念はこれまで「自作農主義」だといわれてきた。それは、農地法第1条の目的規定の中の「農地はその耕作者自らが所有することを最も適当であると認めて」という文言に根拠があると信じられてきた。実際には1952年の農地法制定当時、農地改革への思い入れの強かった当時の農林事務次官が思いつきで書き入れただけものものにすぎないが、以降この文言が農地法の基本理念を示したものと農業関係者の中では受け止められてきたのである。
 そもそも土地や農業機械などの資本も含めた農場の所有者とその経営者は同じである必要はない。素人が農業をやるよりもプロが経営すべきであり、所有者はそこに投下した資本で配当を得ればいい。これは、ブラジルなどで普及している農業経営である。
 
 では、「自作農主義」に関わる文言の削除で、日本も「経営または耕作と所有の分離」を認めることになったのか。答えはノーだ。
 「農業生産法人制度」については、前ページに示したように、要件は緩和するが、改正後も相変わらず農家が法人成りしたものしか農業生産法人としては認めないのである。
法律の文言からは消えても、「自作農主義」は依然として残るということだ。しかも、衆議院・農林水産委員会での審議の過程で民主党からの修正要求によって、これが第一条の目的規定の中にも事実上復活してしまった。
農地改革は社会主義的な改革だった。国会での後退は、農地改革の理念に社会主義的な勢力が依然固執していることを示している。
は今回の法改正の目玉は別にある。「特定法人貸付事業」という制度の拡充だ。これは、2003年に構造改革特別区域制度のなかで認められたもので、原則として耕作放棄地が相当程度存在する区域においてのみ、企業が市町村と農業を適正に行う旨協定を交わした上で、リース(賃借権)方式によって農業に参入できるというものである。
今回の法改正で、この制度に対する地域の限定が外され、原則として全国で賃借権方式による企業参入が可能になる。これが、「所有から利用へ」という農政当局の掲げるキャッチフレーズの中身である。しかし、これについても、民主党の要求で要件が加重されてしまった。
リース方式を全国展開しても
貸す人が増えなければ無意味
 結論を言えば、筆者は農地法の改正という彌縫策は止め、ゾーニング(都市的利用と農業的利用を明確に区分するという土地利用規制。詳しくは後述)を強化する一方で、農地法を思い切って廃止する必要があると考えている。同法はその存在自体が零細農業構造の改善には役立っていないという現実を、農政当局は直視すべきだ。
 歴史を振り返れば、半世紀以上前に制定された農地法は小作人の開放という農地改革の成果を固定するだけの立法だった。自作農創設と小作権の保護・強化を目指してきた戦前の農政を受けて、農地法は、農地についての権利の設定・移転の統制、小作地の保有制限等によって不耕作地主の発生を防止するとともに、賃借権の解約等の制限、小作料の統制等によって小作権の保護を図った。
  しかし、前者は農地の貸し手である所有者に対し農地の流動化を直接的に制限するとともに、後者による賃借権の強化により(よほどのことがないかぎり貸し手は農地を返してもらえなくなることから)農地は貸し出されにくくなるため、農地の流動化そして規模拡大は間接的にも抑制された。すなわち、小作権(賃借権)を強固なものにするという耕作権の保護により、意欲のある農家が賃借で農地の流動性を図り、零細な農業規模を拡大することは困難になったのである。

不在地主は小作地を所有できないとされている。しかし、相続により都市に居住する農地の所有者権が農地を貸せば不在地主による小作地所有となってしまい、農地法に違反してしまう。逆に農地を貸さずに耕作を放棄すれば農地法違反にならないという矛盾が生じている(法改正で、この小作地の所有制限は廃止される)。

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07月09日(木)
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