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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■レスター・R・ブラウンの論考(2)
農業の側から見ると、自動車燃料の需要は底なしだ。というのは、25ガロン(約100リットル)のタンクを、たった一回満タンにするだけのエタノール量で、1人の人間が1年間食べていける穀物が必要になる。たとえアメリカ全土で収穫された穀物すべてを使ってエタノールを生産したとしても、国内で必要とされる自動車燃料のわずか16パーセントしか賄えないのだ。
世界には、今の利便性を失いたくないと考える8億人のドライバーたちと、ただ生き抜くだけで精一杯のもっとも貧しい20億人の人々がいる。現在、この両者間の穀物をめぐる競争が大きな問題として浮上している。
食糧価格が急上昇すると、インドネシア、エジプト、アルジェリア、ナイジェリア、メキシコなど穀物を輸入に頼る多くの低所得国では、都市部で食糧を求める暴動が勃発する可能性もある。そしてその結果生じる政情不安はすべての国々に
直接影響を及ぼし、世界経済の発展を止めてしまう恐れがある。食糧価格だけではなく、日経平均株価とダウ株価指数の動きにも危機が及ぶのだ。
それでも、穀物ベースの自動車燃料経済を構築する代わりの策はいくつかある。現在、米国では自動車燃料の2%がエタノールであるが、自動車の燃費基準を20%引き上げれば、この2%に相当するエタノール量は、ごくわずかなコストで何倍にもなる。
また、今後10年間で、充電可能なプラグイン・ハイブリッド車に移行すれば、毎日の通勤や食料品の買い物のような短距離の走行に電気を使うことが可能になる。そして、安価な電気を供給するために何千もの風力発電所に投資すれば、米国の自動車は風力を主な動力源とすることもできるだろう。ガソリンに換算すれば、1ガロンに1ドルもかからない計算だ。現在、自動車産業の中心地デトロイトで製造される自動車を、プラグイン・ハイブリッド車に転換させるための突貫計画も準備されている。
そろそろ、新たなエタノール工場の建設を認可するのは一時中断しよう。少し時間を取って一息入れ、食糧価格の高騰を招かずにエタノール製造に回せるトウモロコシの量を判断するのだ。
政策上目指すべきは、エタノール燃料はトウモロコシ価格と農場の収入が維持でき、世界の食糧経済を崩壊させない範囲で使用することである。同時に、「スイッチグラス」などのセルロース原料(食物には使われないエネルギー供給原料)からエタノールを製造するためのさらなる努力も必要となってくるだろう。
世界は、食糧と燃料との間で新たに生まれた争いに対処するための戦略を、切に必要としている。そして、穀物の生産と輸出、エタノール製造で世界の首位に立つ米国こそが、この問題の行き先を決めるのだ。私たちは、「輸入石油への依存」という一つの問題を解決しようとして、「世界的な食糧経済の混乱」というさらに深刻な問題を生み出してはならないのである。
(翻訳:横内、酒井、荒木)
〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
バイオ燃料をめぐる状況を、システム思考のループ図というツールを使って、私なりに表したものをこちらに載せておきます。
http://www.es-inc.jp/lib/archives/070301_072010.html
(下にずれていますが、スクロールダウンしていただくと、図が出てきます)
(図1)
自動車燃料への需要が増え、ピークオイルや他の政治的情勢から石油生産量が減少すると、ガソリン価格が上昇します。また、温暖化への対策として、化石燃料ではない代替燃料の需要が増大します。
すると、自動車用燃料として、バイオ燃料(バイオエタノールやバイオディーゼルなど)の需要が増大します。そして、レスター・ブラウン氏が述べているように、米国ではトウモロコシ、ブラジルでは大豆などの食糧用作物がバイオ燃料に
転換されるようになっているのです。
(図2)
トウモロコシや大豆からつくったバイオエタノールは、ガソリンの代替として使われ、ガソリン価格の高騰や温暖化への対策として役立っていると考えられます。
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03月02日(金)
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