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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■参院選マニフェスト―「消費税タブー」が消える
経済情勢などの不可避的な変化や、政権を担ってみて初めて得られた情報、経験を踏まえ、「率直なおわび」と「丁寧な説明」を重ねて、有権者の理解を得ることが大前提である。
2大政党の政策が互いに近づいていくことは、グローバル化時代の必然でもある。対立点の多くは力点の置き方やニュアンスの違いになっていく。
しかし、そのことは競い合いを通じ政策を進化させることにもつながる。この変化を前向きにとらえたい。
■「伝統」か「新たな」か
近寄ったとはいえ鋭い違いはある。両党の公約には正反対の言葉も並ぶ。
民主党は「『国のかたち』を変える」と訴え、自民党は「わが国のかたちを守ります」と唱えている。
自民党は伝統的な価値観を尊重し、「保守」の精神を強調する。具体的には「夫婦別姓法案と外国人地方参政権付与法案に反対し、わが国の地域社会と家族の絆(きずな)を守ります」。
民主党は伝統的な地域や家族の絆はゆるみ、それだけに頼っても孤立は防げないという考えだ。人々がNPOなど様々な活動でつながり、「官」が担ってきた公共サービスも含め社会の一員としての責任を負い、絆を結び直す。「新たな社会づくり」である。
自民党は憲法改正を公約の冒頭に掲げるが、民主党の公約に言及はない。
民主党は公共事業について、総選挙の時の「コンクリートから人へ」を盛らず、「あり方を見直す」としたが、それでも社会資本整備の前倒しもうたう自民党との違いはやはり色濃い。
2大政党の時代、マニフェスト選挙が定着するにつれ、両党は何を対立軸とするか模索を続けた。政策の本筋が似通うほど、違いを際だたせるため、あえて相手の逆を言い、争点を人為的に作り出す。そんな傾向も残る。
理念や政治哲学を練り上げ、具体策に反映させつつ、わかりやすい対立軸を形づくっていくことは容易でない。違う点、同じ点を見極め、判断する困難な仕事が有権者に委ねられている。
■競い合いつつ接点も
2大政党が近寄っていくと離れた位置にある民意がこぼれ落ちかねない。受け止めるのは少数政党の役割だ。
公明党は心の病や児童虐待、孤独死といった「新たなリスク」に対応する「新しい福祉」を提案する。社民党は「米軍への『思いやり』より沖縄との連帯を」と掲げる。国民新党は3年で100兆円の経済対策を訴える。
連立政権が続く時代にあって、大政党が少数政党とどう向き合うか。現在の民主、国民新両党の連立では、消費増税を試みても国民新党が壁となるだろう。かといって民主、自民の大連立では政権交代時代の否定に等しい。
2大政党をはじめ各党が競い合いつつ、政策課題によっては接点を探る。そうした流儀に日本政治は疎かった。今回はその学びの契機になる。
06月20日(日)
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