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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■人類が犯す地球環境破壊最大の事故
原油流出が長期化して打開策にも手間取り、爆発、沈没した海上掘削基地の操業権を保有する国際石油資本の英BPだけでなく、オバマ政権にも批判が向けられ始める中で、大統領が先頭に立って対応している姿勢を打ち出す狙いともみられる。CNNとオピニオン・リサーチ社が5月に共同実施した世論調査では、米国成人の51%がオバマ大統領による事故対策を評価せず、支持は46%だった。
オバマ氏は3度目の視察で、流出対策の実施状況や環境被害を確認するほか、原油漂着が報告されたルイジアナ州グランドアイルを訪れ、地元経済界の指導者と会談。原油汚染処理の陣頭指揮に当たる米沿岸警備隊のアレン司令官、ルイジアナ、アラバマ、フロリダ各州の知事、ニューオーリンズ市長らとも会った。
漏出を止める対策では、BPが4日、海底に沈み原油を噴出している基地のパイプ4カ所にフタをかぶせ、原油を海上の船に吸い上げる作戦を始めた。漏出する原油量を大きく減らす効果があるとしているが、根本的な解決につながるのかは不透明となっている。
オバマ大統領自身、この作戦の成果には慎重姿勢を見せ、フタは現時点で持ちこたえているとみられるとしながらも、楽観的になるのは時期尚早との判断を示した。専門家の見方を引用し、作戦の成否は今後24〜48時間に判明するとも説明した。
オバマ氏はまた、BPは事故で被災地域に道義的かつ法的な責任を負っているとの考えを改めて強調。同社がイメージアップのためテレビCMや株主配当のために巨額の資金を費やしている事実に言及し、被災者への被害補償が遅れることをけん制した。大統領は先に、事故の解決策が遅れていることなどを踏まえ、「現状に怒っている」とも発言していた。
事故は4月20日に発生、掘削基地は2日後に沈み、11人の犠牲者が出た。米政府によると、1日当たり最大で1万9000バレルの原油が流出している。事故原因については、BP、油井を管理、運営していたトランスオーシャン社と契約業者ハリバートン社が責任をなすり付けあっている。

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社説:原油流出事故―海底開発の国際的規則を
                   2010年6月13日  朝日新聞
 メキシコ湾で起きた米国史上最大の原油流出事故は、発生から7週間が過ぎても流出を完全に止めるめどが立っていない。この事故は、新たな課題を人類に投げかけている。
 化石燃料の大量消費文明が、深海底での油田開発を後押ししてきた。巨額の開発費や事故による環境汚染という危険を勘案してもなお、海底油田に手を伸ばしていくべきなのか。それとも代替エネルギーへの投資や省エネにもっと力を注ぐべきなのか。
 立ち止まってよく考える機会ではないだろうか。
 ルイジアナ州沖のメキシコ湾に浮かぶ英国際石油資本(メジャー)BPの海底油田基地が爆発した。2日後に基地が沈没する際、送油管が折れ、水深1500メートルの海底から猛烈な原油の暴噴が始まった。
 周辺はイルカやウミガメなど海洋生物の宝庫であり、エビやカキなどの豊かな漁場でもある。そこを茶褐色の原油が脅かしている。
 BPはテキサスやアラスカでも事故を起こしており、今回も安全管理を怠ったのではないかとの批判が出ている。米連邦政府の監督当局が許認可を甘くしたとの疑惑も浮上した。本来は作動するはずの暴噴防止装置が働かなかったことなど、技術面でも深刻な問題を投げかけている。
 資源ナショナリズムのあおりで、陸上油田の大半は国有が占める。石油メジャーは独自の権益を求めてより沖合へ、より深海へと開発の領域を広げるようになった。3千メートルを超える深海底での掘削も増えている。
 採掘の技術進歩が背景にあるが、今回の事故で、環境破壊を最小限に抑える復旧技術は不十分であるという現実が露呈した。
 オバマ大統領は海底油田の開発許可を向こう半年間にわたり凍結し、再発防止策を作る方針を示した。当然の措置だが、対岸の火事ではない。世界各地の海底油田開発について、安全や環境への影響のチェック体制を再点検する必要がある。

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06月14日(月)
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