ID:22831
『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■報道は管内閣一色
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社説:菅内閣に注文する 熟慮と信頼の外交を
               毎日新聞 2010年6月9日
 新政権は重い外交課題を背負ってのスタートとなった。米軍普天間飛行場移設をめぐる鳩山前政権の迷走は日米関係にきしみを生じさせた。一方、東アジアの情勢は韓国海軍哨戒艦の沈没事件を機に緊張が高まっている。こうした中で、日本外交の急務は日本の安全保障の要である米国との信頼関係の再構築であることは論をまたない。
 菅直人首相は外交の基本方針として日米基軸と対中関係の重視を掲げている。前政権が目指した路線を基本的に踏襲するものである。ならば、鳩山外交がなぜ挫折したのかを総括し、その教訓を学び取ることから始めなければならない。
 鳩山由紀夫前首相は「緊密で対等な日米関係」と「アジア重視」を外交の2本柱に据えた。その目標設定は決して突拍子のないものではなかった。小泉純一郎元首相が「日米関係が緊密であればあるほど中国、韓国、アジア諸国とも良好な関係が築ける」と述べたように、自民党長期政権下の外交がとかく国民の目に「対米追従」と映っていたからだ。
 これに対し鳩山前首相は対米関係で「対等」を掲げ、その一方で影響力を急速に高める中国を中心とするアジアとの関係を重視した。
 だが、前政権は「緊密で対等」な日米関係が具体的に何を意味し、それを全体の外交戦略の中にどう位置づけるのかを提示し得なかった。現状を改善し目標に近づけるための大きな戦略と具体的な手順を組み立てることができなかったのである。
 鳩山前首相が退陣間際になって在日米軍の抑止力の必要性を明確に認めたことがそれを示している。普天間問題で自らが示した決着期限に迫られ、「最低でも県外移設」との約束をほごにして苦し紛れに米政府と合意したのが県内移設を明記した共同声明だった。一連の経過をみれば思慮が足りなかったと言わざるを得ない。
 菅首相はオバマ米大統領との電話協議で共同声明の履行を確認した。政府間の合意を尊重しなければならないのは当然だが、頭越しの合意に地元の反発と怒りは激しい。首相は引き続き大きな困難を背負うことになる。
 日米合意は代替施設の位置や工法の決定時期を8月末としている。首相は8日の会見で、その期限をにらみながら沖縄の負担軽減と地元の理解を求めることに並行して取り組む考えを表明した。
 今月下旬のカナダでの主要国首脳会議(G8サミット)の際のオバマ大統領との会談が菅外交のスタートとなる。まずは首脳間の信頼を取り戻すことに全力を傾けてほしい。
【関連記事】
毎日新聞 2010年6月9日 2時30分

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菅内閣発足―「選択と説得」の政治を
                 2010年6月9日  朝日新聞
 「20年間にわたる日本の閉塞(へいそく)感を打ち破る」。そんな目標を掲げて菅直人内閣が発足した。
 経済は低迷し、暮らしは厳しさを増し、人々をつなぐきずなはほころぶ。年金や医療の安全網が先々まで持つのか不安が募る。この閉塞感から抜け出すことは国民共通の願いに違いない。
 少子高齢化に経済のグローバル化、そしてデフレ。日本を取り巻く環境の激変に、政治は適切な手を打てず、あるいは後手に回ってきた。それが、閉塞感を深めたことは否めない。
 時代の変化に対応できない古い政治のモデルを新しい政治に切り替える。歴史的な政権交代はその絶好機だったはずだが、鳩山政権は古さと新しさを「仕分け」できないまま沈んだ。
 菅政権にはぜひそれを成し遂げてもらいたい。でなければ政権交代の値打ちが暴落し、日本の民主政治は取り返しのつかない痛手を負う。
 「強い経済、強い財政、強い社会保障」を唱える菅首相は、まず政治を鍛え直し、「強い政治」をつくることから始めなければならない。
■あれかこれかの時代
 古い政治モデルとは「分配の政治」である。右肩上がりの経済成長時代、自民党は成長の「果実」を全国津々浦々にばらまき、見返りに「票」を得て長期一党支配を固めた。透明で公正な「再分配」とは似て非なる利益誘導政治である。

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06月10日(木)
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