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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■国家の財政破綻を回避するには
 昨年9月の政権交代以降、菅直人氏は国家戦略担当相、財務相としてしばしば、デフレ克服に向けた「日銀の努力」の必要性に言及してきた。昨年11月には、日本経済がデフレ的状況にあると宣言し、「デフレ傾向がこれ以上強まらないよう、日銀と十分意思疎通を図りたい」と指摘。08年秋のリーマン・ショック後の大幅な金融緩和の修正を模索する日銀をけん制した。
 宣言後もデフレは続いており、菅氏が望ましいとする消費者物価指数の上昇率(2%程度)を大きく下回っている。4月には、物価上昇率を金融政策の目標値として定める「インフレ目標」について「魅力的な政策」と発言。日銀内には「デフレ脱却を理由にした日銀に無理な注文が増える」との懸念が強まった。
 4月末の金融政策決定会合で日銀は、日本の経済成長力を高めるため、環境などの成長分野へ資金供給する異例の新制度導入を決定。「デフレ脱却に汗をかく日銀」(幹部)をアピールすることで、菅氏を中心とした政府・与党側の緩和圧力をかわす狙いがにじむ。
 だが、市場では「菅首相は輸出を後押しし、経済成長を促す観点からも円安を重視しており、日銀に(円安につながりやすい)追加緩和圧力を強める」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏)との見方が多い。財政再建が思い通りに進まなければ、インフレ目標導入や長期国債買い増しなどを迫られそうだ。【清水憲司】
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社説:菅直人新首相 政治立て直す指導力を
                2010年6月5日 毎日
 菅直人新首相が誕生した。迷走を極めた鳩山内閣が9カ月足らずで退陣し、民主党の政権担当能力への国民の信頼が大きく揺らぎ、2度の失敗が決して許されない中で国政のかじ取りを担う。
 前政権の失敗を踏まえ政権の性格が変わったことを示すためには小沢一郎前幹事長との二重権力構造を招かない体制を構築し、組織優先でバラマキ型に陥った悪弊を改めることが必要だ。危機的状況にある財政再建、揺らぐ日米関係の再構築など内外の諸課題で責任ある方策を掲げ、来る参院選で国民の審判を仰がねばならない。
 ◇「脱小沢」を徹底せよ
 「日本の行き詰まりを打破したい」。菅氏は国会での首相指名後の記者会見で難局にあたる決意を強調した。だが、人事、政策については総じて慎重な言い回しに終始した。
 今回、民主党代表選の焦点は、鳩山由紀夫前首相と共に役職から身を引いた小沢氏の影響力排除をどこまで示せるかにあった。菅氏の貫禄勝ちだったとはいえ、小沢氏と距離を置く姿勢を明確にしたうえで樽床伸二衆院環境委員長に圧勝した意味は大きい。最大勢力である小沢氏系グループがキングメーカーとなる構図は幻想だったとすら言える。
 とはいえ「脱小沢」の明確な指標は、党の要の幹事長人事だ。小沢氏と距離を置く枝野幸男前行政刷新担当相の起用を検討している模様だが、仮に小沢氏への配慮から見送るようでは政権の足元を見られよう。
 国会で首相に指名されたにもかかわらず、組閣を来週に先送りした対応も異例だ。体制構築にある程度の日数をかけることはやむを得ないが、危機管理上、本来は首相指名選挙も延ばすべきではなかったか。
 菅氏に求められるのはトップの言動への信頼を回復するリーダーシップの発揮である。市民運動からスタートし、さきがけなどを経て旧民主党結党に参画した菅氏は非2世議員で、自民党に所属した経歴も持たないという近年の首相にないユニークさを持つ。ここ数代、ひ弱で資質が問われたリーダーたちとは異質のしたたかさを期待したい。
 だからといって、国民の菅氏を見る目が決して温かいわけではあるまい。鳩山内閣の副総理としても存在感を発揮したとは言い難い。かつて厚相として「薬害エイズ」に切り込んだ改革者のイメージを取り戻すには、前政権の路線継承を強調するだけではいけない。政策や政権運営の見直しを果断に進めねばならない。
 組織票対策があらゆる政策課題に優先したかのような選挙至上主義を捨て、開かれた党運営に改めることが大切だ。「政治とカネ」の問題も真に政界の浄化を目指すのであれば小沢氏らが説明責任を果たすことはもちろん、企業・団体献金の全面禁止など結果を見せねばなるまい。

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06月08日(火)
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