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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■終わりを知らないデフレの脅威
製造ラインの大半を占領していたのはH&MのほかZARA、J・C・ペニーなどの欧米勢。日本企業向けの委託生産が増えたのは、消費者の低価格志向が強まったここ1〜2年に過ぎない。だが、日本勢がこれまで生産拠点としていた中国は人件費が上昇し、人民元の切り上げも懸念材料として浮上しており、今後バングラデシュなど、より労働力が安い国々に生産がシフトしていくのは間違いない。格安品の日本への流入はさらに拡大し、国内価格を押し下げる圧力が一段と強まる可能性が高い。
◇内需拡大に限界
こうしたデフレの悪循環を食い止めるのは容易ではない。日本の15〜64歳の生産年齢人口は95年をピークに既に減少に転じ、国内需要がどんどん拡大していくとは考えにくい。子ども手当のほか、減税などを含む少子化対策強化が論じられるが、効果が出るまでに時間がかかる。消費税を引き上げて年金や介護などの社会保障を充実させ、国民の将来不安を取り除いて消費を促そうとの考えも、効果を疑問視する声は根強い。
さまざまな施策を組み合わせてデフレと闘うのは当然だが、アジアを取材した実感として、成長する新興国の需要を積極的に取り込みながら、ねばり強く企業の収益力回復と雇用改善を進めることが有効な手段だと考える。
新興国といえばBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)だが、これに続き成長が期待される「ネクスト11」もある。バングラデシュはその一つで、インドネシア、トルコ、フィリピン、ベトナムなど11の国だ。そこは労働力が安いというだけではなく、市場としても有望だ。
バングラデシュの経済成長率は09年度(08年7月〜09年6月)まで7年連続で5%以上の高成長を維持。1億6222万人(09年推計)の人口は、50年には2億2250万人に急増する見通しだ。
衣料品輸出の拡大で、繊維関連の雇用は拡大しており、工場労働者の生活は着実に上向いている。目下、1人当たりの年間国民総所得はわずか520ドル(約4万8500円)と世界で下から20番目の少なさだが、今回訪問した工場の労働者たちは「テレビ、冷蔵庫を買ったので、次は貯金」と屈託なく話し、その笑顔には「生活は必ず良くなる」という希望が感じられた。
成長期待の投資も始まった。NTTドコモは08年9月、約370億円を投じて携帯電話3位のアジアータ・バングラデシュの株式の30%を取得。KDDIもインターネットの普及をにらみ、ネット接続サービスのブラックネットを今年1月に子会社化した。
これら新興国の成長を取り込む余地はまだまだ大きい。日本経済の活力を維持するためにも、「グローバル化の深化」への対応に、後れを取ってはならない。(東京経済部)
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毎日新聞 2010年4月30日 0時40分
05月05日(水)
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