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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■景気2番底に突入か
しかし、世の中はそう甘くはない。これまでの政策運営が及第点であるからといって安穏としていられるわけではない。足元で“景気二番底リスク”という逆風が、急にそしてかなり強く吹き始めたからである。
景気二番底リスクの元凶は米国景気のぜい弱性の高まりである。
最近の米国経済データの中で最も衝撃的であったのは9月の自動車販売である。トラックを合わせた合計で74.6万台と8月の126.2万台から52万台弱も減少した。41%の減少である。水準としてはボトムとなった今年1月の実績(65.7万台)をわずか9万台上回ったに過ぎない。まさにクラッシュ的な減少である。
理由は改めて語るまでもないが、政府が導入した新車販売促進プログラム(cash for clunkers、燃費効率などの一定の条件の下に新車購入者に対して最大4500ドルの補助金を支給する制度)停止の反動である。プログラムを停止すれば反動が出る可能性が高いことは事前に分かっていたが、ここまで大きな落ち込みになるとは誰もが予想していなかっただろう。残念ながら、それだけ米国の消費市場を取り巻くファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は悪いと解釈せざるを得ない。
米国の消費者が縮こまっている背景はいくつかある。調整が続く雇用市場、底入れしたものの回復力が極めて乏しい住宅市場、上昇軌道に復帰できない不動産価格などである。雇用者報酬が伸び悩む中で再び家計貯蓄率が低下し、消費余力が乏しくなっていることも懸念材料である。このまま追加対策が打たれなければ、クリスマス商戦は悲惨な結果になる可能性がある。
米国の個人消費が回復しなければ、世界的な生産活動も、早晩、下を向くことになるだろう。中国の内需は引き続き好調であるが、それだけで世界生産をけん引し続けることは不可能である。日本の輸出も年末にはピークアウトしてしまうのではないか。
そうした状況では、国内の冬のボーナスにさらなる下押し圧力がかかるだろう。また、冬になれば、国内観光シーズンも終わりを迎えているはずであり、高速道路料金引き下げの消費刺激効果も減退している可能性が高い。加えて、新型インフルエンザの拡大による人の動きの停滞も懸念される。これらの悪材料が重なったとき、国内個人消費は一気に深い調整を演じるかもしれない。
輸出ピークアウトに個人消費の調整が加われば、1〜3月期の国内総生産(GDP)成長率はマイナスに落ち込むだろう。二番底の始まりである。
二番底シナリオを回避し、1〜3月期の景気調整を“踊り場”の範囲内で食い止めるためには最低限、金融・財政政策の引き締めを先延ばしすべきである。
無駄な公共事業を見直すことには基本的に賛成するが、“削減ありき”の発想で臨むことは許されない。また、いかなる措置についても金融政策における出口戦略を安易に認めるべきではないだろう。例えば、日銀がコマーシャルペーパー(CP)と社債の購入を停止した場合、市場ではその延長線として政策金利の引き上げが視野に入るだろう。これは円高圧力を高め、輸出を下押しする。二番底リスクが顕在化している中にあって円高を認めるなどという政策はあり得ない。むしろ、現状は、政府・日銀が一体となって円高懸念論を展開すべきであろう。
成長戦略を持たない新政権が二番底を回避できるのか、多くの市場参加者は懐疑的である。これまでのところ株価は暴落を免れているが、それは単に嵐の前の静けさなのかもしれない。哲学なき公共事業削減や金融緩和の是正など、二番底の回避という基準に照らして政策運営が間違った方向に踏み出せば、株価はあっさり崩れてしまうリスクがある。新政権の政策運営は今まさにその真価を問われ始めている。
10月17日(土)
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