ID:22831
『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■足利事件―DNA一致せず冤罪に発展
 取調官から鑑定結果を突きつけられ、菅家さんは犯行を自白したという。一審公判の途中で「DNA型鑑定で虚偽の自白を迫られた」と否認に転じたが、一審も二審も最高裁も、DNA型鑑定と「自白」の方を信用して有罪とし、無期懲役の判決が確定した。
 獄中の菅家さんと弁護団は再審を請求し、再鑑定を求めた。事件当時は千人に1.2人を識別できる程度だった鑑定の精度が、いまでは4兆7千億人に1人にまで向上しているからだ。
 東京高裁が依頼した再鑑定の結果は一転して、犯人と菅家さんのDNA型は一致しないというものだった。
 東京高検は、この結果が「無罪を言い渡すべき証拠に当たる可能性が高い」との意見書を東京高裁に出した。高裁は早く再審決定をするべきだ。
 衝撃的な事態である。DNA型鑑定は多くの事件で実施されてきた。初期の鑑定の信用度が揺らぐ影響は計り知れない。92年に福岡県飯塚市で起きた女児2人殺害事件では、DNA型鑑定が証拠となって死刑判決の確定した男性が昨年、刑を執行されている。
 再審請求の裁判でDNA型を再鑑定したのは異例だ。この際、DNA型鑑定で有罪となったほかの事件についても再鑑定を実施すべきではないか。
 精度があがったとはいえ、DNA型鑑定だけに頼り過ぎるのは危うい。捜査段階で犯人以外のDNAが紛れ込む可能性がある。警察はDNAを適正に採取するだけでなく、将来再鑑定できるだけの分量をきちんと保管することを徹底してほしい。
 裁判所にも猛省を促したい。DNA型鑑定を過信するあまり、無理やり引き出された「自白」の信用性を十分検討せず、有罪との判断に陥った面はなかったか。再審裁判ではこの点を厳しく検証しなくてはならない。
 自白の強制を防ぐためには、取り調べの可視化が重要だ。取り調べの録画は一部にとどまっているが、すべての過程の録画が必要だ。このことを今回の問題は改めて示している。
 プロの裁判官といえども判断を誤ることがある。私たち国民も法廷や評議の場に裁判員として参加する時代になった。常識を働かせて自白や証拠を遠慮なくチェックする。その責任の重さを思う。

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3、社説:足利事件 DNAの功罪見極めて
                   毎日新聞 2009年6月5日 0時03分

 科学捜査の最先端を行くDNA鑑定によって投獄され、同じDNA鑑定でえん罪が晴らされる、という数奇で皮肉な経過をたどることになりそうだ。19年前、栃木県足利市で4歳の女児を殺害したとして、無期懲役刑が確定して服役していた菅家利和さんのことだ。
 東京高検は再審裁判を待たずに刑の執行を停止し、異例の釈放に踏み切った。犯人とは別人とするDNA鑑定が出た以上、妥当な判断だが、有罪が確定する前にも救済の機会があっただけに、拘置、服役が17年にも及んだことが悔やまれる。捜査当局はもちろん、裁判所の関係者も猛省しなければならない。再審裁判を急ぐべきは言うまでもない。
 この事件は導入後間もないDNA鑑定が逮捕の決め手になったことで注目され、最高裁が初めて証拠価値を認めるケースともなった。だが、初歩的な捜査ミスも目立った。供述した殺害方法と被害者の解剖所見が食い違ったほか、菅家さんは別の2件の女児殺害についても犯行を供述し、検察で不起訴となっていた。自白の誘導を疑うべきなのに、警察も検察も、裁判所も見逃した。
 見込み捜査で容疑者を割り出し、自白を迫る。自白すれば、「真犯人でなければ認めるはずがない」と決めつけて捜査が自縄自縛に陥る……。えん罪事件の“お定まり”のパターンだが、本件でも捜査機関と司法府の自白偏重主義が災いした。しかも、当時のDNA鑑定は精度が低いことを承知していながら、重視し、自白を引き出す材料にもされた。

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06月07日(日)
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