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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■事業整理の実態
ただ、こういう変化があまり広く知られていないのはもったいない事です。しかも、こういう手続きの改善が起きたのは、先に述べた通り、件数が増加して裁判所側が対応を見直した結果です。つまり、東京地裁管轄の東京23区のような多発地域ではこうした恩恵にあずかれますが、倒産処理件数が年に数件という地域では、裁判所のスタッフ・体制の問題もあって、必ずしも東京地裁と同じというわけにはいきません。東京地裁のノウハウが全国津々浦々に行き渡っているわけでもありません。このあたりは地裁の裁量に任されています。結果的に倒産に関しては地域間で、受けられる司法サービスに格差が生じているのが現実です。
破産処理が終わるまでの期間もぐっと短縮されています。私は倒産後、3年半も破産者でした。でも、今では3カ月〜半年程度で破産者扱いは終わるのが普通です。その分、再起しやすくなっているとも言えるでしょう。
自らの倒産体験を踏まえ、「経営危機コンサルタント」として大勢の経営者の相談を受け続けています。これまでに約650人の経営者から相談を受けました。15年近い経験から言えば、中小・零細企業の経営者の悩みは、昨今の景気後退や円高などのせいもあって、ますます深刻になっています。しかも、構造的な経営環境の変化があり、これまでの常識が通じにくくなっているのです。
例えば、販売業。このところ相談件数が急増している業種です。本の中では音楽CDショップを一例として取り上げました。ダウンロード販売が広がり、ショップそのものの役割が急激に縮んでいったせいで、町中の中小音楽CDショップは生き残りが難しくなっています。
私はジャズと落語が好きで、古いレコードを集めています。最近はもっぱら買い物はインターネット。家に眠っていたお宝を、個人がオークションで売り出すこともあり、時折は掘り出し物に巡り会えます。アマゾンも新品ばかりではないので、昔の本も探しやすくなりました。在庫量が勝負のレコードや本といったロングテール商品の場合、中小店舗はネット流通には対抗しにくいでしょう。
ただ、この構造的変化は音楽CDショップに限った話ではなく、多くの販売業に当てはまる問題です。インターネットショッピングが当たり前になり、流通コストを限界まで切り詰めるニーズが生産者と消費者の両方から求められている今、商品を仕入れて、販売マージンを上乗せし、店頭で売るという「販売業」の業態自体が存在意義を問い直されていると言えるでしょう。店頭で何らかの付加価値を加えて、消費者に手渡すという役割を果たさず、単純に仕入れて売るだけの店舗は、どんな商品を取り扱うにしろ、これまで通りに生き残っていくのは難しい地合となりつつあります。
「倒産相談」にぎわす2業種とは
英語の「shop」と「store」は意味が微妙に異なり、「shop」は店で何らかの手を加えてくれる店で、「store」は商品をそのまま売っている店だと聞いたことがあります。同じような商品があちこちで手に入る今、その店ならではの付加価値がプラスできない店は、消費者を呼び込むのが難しくなっています。ただ、そんな付加価値は簡単に生み出せないので、販売業はどこも苦戦を強いられているのでしょう。
広告代理店、広告制作業も最近、相談が多いもう1つの業種です。テレビや雑誌といったメディアが広告媒体として過渡期を迎え、それらに連なる広告関連業種は業界丸ごと大きな変化にさらされています。コストダウンを迫られても、もうのりしろがないので、仕事を続けていくのかどうかを判断せざるを得ない状況に置かれているのです。
実は私がかつて経営していた会社もこの業種でした。印刷事業もあわせて営んでいたのですが、かつての仕事仲間は多くが厳しい経営環境に直面しているようです。経営者の集まりに外国車がずらりと並ぶような羽振りの良い時期もあったのですが、今では過去の話となりました。テレビが飛ばし見で媒体価値を損ない、雑誌は休刊が相次ぎ、チラシ需要も落ち込む――。こんな状況を予想できた経営者はほとんどいなかったでしょう。
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04月14日(火)
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