ID:22831
『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■生活文化の基礎中の基礎が崩壊しつつある
しかもこの施設を運営するNPO法人は、群馬県に有料老人ホームとしての届けを出していなかった。それでは行政の目もなかなか届かない。施設の関係者はこんな事情を明かす。「届けると設備基準などを満たすための投資が必要で、利用料に跳ね返る」
墨田区は結果的に無届けの施設を、お年寄りに紹介していたことになる。
しかし区ばかりを責めるわけにはいかない。施設が地元から遠く離れていては、お年寄りに好ましくないとわかっていても、身近に受け入れ先がなければ仕方ないだろう。無届けであれ、こうした施設がなかったら、行き場のないお年寄りは救えない。
「無届けの施設を廃止しろ」と言うだけでは問題は解決しない。
同じような無届けの老人施設は全国で350を超すという。政府や自治体はまず、こうした施設の運営や設備、介護、防火の体制を緊急に点検する必要がある。
1人で動けない人がいる施設であれば、たとえ今の法律で義務づけられていなくても、スプリンクラーや火災報知機の設置を検討すべきだ。
費用負担を施設側だけに求めていては設置は進むまい。行政がもっと必要な助成をしてはどうか。国や地方の財政事情は厳しいが、ことは人の命にかかわる。
施設の数を増やす手だても、もちろん考える必要がある。優先順位は高いはずだ。
介護の必要な単身のお年寄りはこれから増える一方だ。今こそ高齢者向け施設のあり方を社会全体で見直し、体制を整えなくてはいけない。
急速な高齢社会の安心と安全を確保する覚悟が求められている。
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2、老人施設火災 背景にある高齢者施策の貧困
2009年3月22日 読売新聞
超高齢社会の行く末を案じさせるような、痛ましい出来事だ。
群馬県渋川市の高齢者向け施設「静養ホームたまゆら」の火事で、10人の入居者が亡くなった。
なぜ、このような惨事が起こったのだろうか。
要因は大きく二つある。第一には施設の運営者の問題だ。
「静養ホーム」といっても、法令にある呼称ではない。有料老人ホームかどうかをあいまいにしたまま、県への届け出をしなかったため、群馬県は実態をつかんでいなかった。
防火設備や職員の配置など、高齢者を受け入れる施設として十分な態勢だったとは思えない。増築を重ねた建物は複雑で、認知症や寝たきりの人もいる入居者が、深夜の火事で避難しきれなかったのは当然だ。
無届け老人ホームは、厚生労働省の調査で、全国に400近くある。把握できていないものも相当あるだろう。
老人福祉法は罰則付きで届け出義務を定めているのに、徹底されていない。厚労省と自治体は厳しく臨んで、無届け施設をなくし、指導を行き届かせることが肝要である。
問題のある施設でも必要とされる現状が、第二の要因だ。
「たまゆら」の入居者の多くは現在も東京都墨田区の“区民”として生活保護を受けている単身高齢者だった。「たまゆら」の経営者が働きかけて、区役所がこうした高齢者の入居を斡旋(あっせん)した。
東京では地価が高いことなどから、介護施設が極めて不足している。生活保護の高齢者が、病気などで一人暮らしが難しくなった場合、生活保護費の範囲で入居できる施設は少ない。
墨田区に限らず、都内の自治体は、他県に受け入れ施設があれば助かる。地方の施設側も、入居費は生活保護費から確実に支払われるのでビジネスになる。
その結果、多くの高齢者が行政の目が届かない状況に置かれる。墨田区は施設の実態を知っていたのだろうか。群馬県も入居者が県民なら、もっと早く関心を持ったのではないか。
高齢化は今後、地方よりも東京など大都市で急激に進行する。こうした状況をこれ以上、放置するわけにはいかない。
行政の責任をはっきりさせ、連携を整えるべきだろう。介護施設の拡充・整備とともに、高齢者に対する生活保護の仕組みも、見直しが必要である。
(2009年3月22日01時24分 読売新聞)
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