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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■オバマ大統領就任各紙の論説を読む
安定して、厚みのある中流社会こそが民主社会の基礎だという確信があるのだろう。
だが、米国民が大事にする「自由」を損なわずに、公正な社会を実現するのは容易ではない。「大きな政府」でもなければ「市場万能」でもない。オバマ氏の言う「賢い政府」の実像を世界が待ち望んでいる。
■アフガンを仕切り直せ
理想主義者と見られがちなオバマ氏だが、現実から離れて政治は成り立たない。就任前から打ち出した空前の景気対策にしても、民主党優位の議会であってもすんなり行きそうもない。
公約だった富裕層への増税には、経済チームが「今は時期が悪い」と待ったをかけ、支持層の労組は厳しいリストラに抵抗を強めている。
怖いのは、保護主義の誘惑だ。雇用や市場、米企業を守るという目的にとらわれすぎれば、世界の自由貿易がおかしくなる。焦点の自動車大手の救済策が最初の試金石になろう。
イラク戦争への反対では、一貫している。最高司令官としての初仕事は、公約である16カ月以内の戦闘部隊の撤退を軍に指示することだ。
イラクの治安が悪化しないよう配慮しつつ、「間違った戦争」を一日も早く終わらせなければならない。
他方、アフガニスタンへの米軍増派は慎重に考えてもらいたい。
軍事作戦を突出させてはアフガンの住民たちの反発が増すばかりだし、隣国パキスタンの政情不安にもしっかりと目配りする必要がある。
軍事と民生支援をどう組み合わせ、国際社会の力を結集するか。01年のボン会議のような国際会議を開き、包括的な安定戦略を再構築したい。
■世界のかじ取り役として
中国、インドなどの台頭で、世界は多極化してきた。米国の影響力は相対的に小さくならざるをえまい。ブッシュ時代の単独行動主義への決別は、時代の必然でもある。
だが、米国が自信を喪失し、内向きになれば、世界の秩序は混迷する。傷ついたとはいえ、米国の軍事力、経済力は群を抜いた存在だ。民主主義や人権尊重の考え方を広めてきたソフトパワーもある。
中東和平や北朝鮮、イランの核問題など、世界の安全は米国抜きでは語れない。これも公約の地球温暖化対策をはじめ、核廃絶などのグローバルな課題も山積している。
オバマ氏は「対話と国際協調」という新しい旗を掲げた。世界が直面する待ったなしの危機を打開するために、日本も世界も協力していきたい。
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2、社説:オバマ氏と世界―柔らかく、したたかに
2009年1月22日 朝日新聞
自省するかのような厳粛なトーンで、オバマ新米大統領は語りかけた。選挙戦のころの、聴衆を奮い立たせるような熱っぽさは影をひそめた。直面する困難の重さと、指導者としての責任感がそうさせたのだろう。
経済危機など現実の厳しさを率直に認めたうえで、「アメリカよ、それは解決できる」と、米国民に勇気をもって試練に立ち向かうよう求めた。
そんななかに「すべての国の皆さんや政府に知ってほしい」という異例の呼びかけがあった。
イスラム世界に対し「私たちは、新たな道を模索する」と述べ、これまでとはアプローチを変え、共通の利益と相互の尊敬に基づく関係を築きたいという意欲を示した。
9・11同時テロをきっかけに、米国ではイスラムへの偏見が一気に強まった。逆に、イスラム世界では反米感情が燃え上がった。この不信と憎悪の悪循環を何としても断ちたいという思いに違いない。それなしに中東和平もイラクの安定もないし、本当のテロ対策も成り立つまい。
イラク戦争で4千人を超える米軍兵士が命を落とした。イスラムとの対話を呼びかける新大統領の言葉を、米国民も納得して聞いたのではないか。
むろん、新大統領の一言で長年の対立の構図が解けるわけはない。イスラエルのガザ侵攻にオバマ氏は沈黙し、イスラム世界を中心に失望と憤りが広がった。だが、就任演説で触れたことの重さは軽視すべきではない。
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01月23日(金)
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