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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■ 疲弊する医療現場
続いて、愛知県岡崎市の花田こどもクリニック院長の花田直樹氏は「現在の小児医療の問題点」として、(1)不当な報酬の低さとフリーアクセスによる患者数の多さ、(2)小児科勤務医の減少、(3)乳幼児医療無料化に伴う救急外来のコンビニ化、(4)訴訟リスクとクレーマーの存在――を挙げた。
花田氏は「コンビニ感覚で救急車が利用されるが、コンビニ診療さえ難しい状況だ。しかし、司法判断は救急外来にも最高級の医療レベルを要求している。無理して対応しても刑事事件の対象になり得ることを医師は学習している」と述べ、産婦人科の医師が逮捕された福島県立大野病院事件の影響で入局する医師が減少し、現場では「無理に救急を受け入れない」という萎縮医療が生じているとした。
花田氏はまた、医師らに言いがかりを付ける「クレーマー患者」の存在が萎縮医療に拍車を掛けているとした。
「過熱する医療事故の報道で、不信に満ちた攻撃的な言動が目立ち、現場のやる気をさらに萎えさせている。今までは医師の使命感でカバーしてきたが、現状では医療安全上も自分の健康上も無理がある」
■ 救急患者の増加と国民の意識
疲弊した勤務医をさらに追い詰める「クレーマー患者」と訴訟リスク。その背景には救急患者の増加がある。
日本医科大学付属病院・高度救命救急センター部長の山本保博氏は、救急患者が増えている一方で救急医療機関が減少していることを指摘。「救急医療の現状、課題」として、(1)救急医療施設の負担の増大(救急患者の増加など)、(2)資源の圧倒的な不足(救急医不足など)、(3)救急医の士気の低下――を挙げた。
山本氏は救急車の出動件数(2005年)のうち搬送されていない約9%について、「救急車が到着しても現場に患者がいない」と指摘。その主な理由として、▽119番した後の辞退、▽いたずら、▽酔っぱらい――を挙げた。
その上で、119番通報した患者を重症度や緊急度などによって分類する「トリアージ」の必要性に触れた。
「アンダートリアージ(過小評価)をどう考えるかという問題がある。『ちょっと胸がつかえる感じがする』という患者のうち1万人に1人ぐらいは心筋梗塞の場合がある。このような患者を自宅に戻してしまった場合の問題がある。しかし、これからはトリアージをしていかなければ、“たらい回し”はどんどん増える」
この日、舛添厚労相が欠席したため、西川京子副大臣が次のように感想を述べた。
「安全で安心な食物にコストがかかるという意識は国民の間に育ってきたが、医療の分野では国民の意識が育っていない。今日はマスコミの方もいるようだが、すべて受け入れる側が悪いという指摘の仕方ではなく、一緒に医療を構築するという方向性を持たないと不毛の議論になっていく。今、これを厚生労働省が一番先にやっていかなければならない」
【溶けゆく日本人】蔓延するミーイズム(7)
疲弊する医療現場
2008.2.13 産経新聞
■権利を名乗る身勝手
昨年末、東京都内の病院に勤める産婦人科医(38)は、繋留(けいりゅう)流産で手術日を決めたばかりの患者(35)からの電話に一瞬、返す言葉を失った。
「昨日決めた手術日ですけど、仕事の都合がつかないので変えてください」
繋留流産とは、胎児に異常があって育たず、お腹の中で死んでしまうこと。そのままにしておくと、出血したり細菌感染しやすいので、死んだ胎児を子宮から取り除く手術をしなければならない。緊急手術が必要なほど切迫した状態ではないが、患者の体のためにはなるべく早く手術をした方がいい。
年末ということで、手術の予定がかなり立て込んでいた。それでも幸い翌日に空きがあったので翌日の手術を提案したが断られ、1週間後に決めた。もちろん患者もそのとき「この日なら大丈夫」と承諾、スタッフの手配もすませたところだった。
患者は大手企業に勤める会社員。確かに年末は仕事が忙しいとはいえ、それを承知で手術日を決めたはずだった。
「絶対に(手術日は)変えられないんですか」と食い下がる患者に、産科医が「すべての患者さんの手術日程を変えないと無理です」とこたえたところ、「じゃあ、そうしてください」との言葉が返ってきた。
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02月28日(木)
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