ID:22831
『日々の映像』
by 石田ふたみ
[258001hit]

■レスター・R・ブラウンの論考(2)
EPIのまとめでは、2006年12月31日現在、116のエタノール工場で年間5,300万トンの穀物が消費されている。また、79の建設中の工場は、ほとんどが既存の工場よりも規模が大きくなるため、これらが稼働体制に入ると、年間5,100万トンの穀物を消費するようになる。さらに、11の既存工場で拡張が予定されており、800万トンが上乗せされる。(トウモロコシ1トン=39.4ブッシェル=エタノール110ガロンに相当)

その上、同じくこの時点で計画中のエタノール工場は、優に200はある。仮に、これらが2007年の上半期に、2006年の下半期と同じペースで建設されるとすると、2008年の収穫が始まる同年9月1日には、新たに30億ガロンの生産能力をもつエタノール工場が稼動していることになる。これには2,700万トン以上の穀物が必要だ。

そうなると、エタノール工場全体で必要なトウモロコシは、USDAが予想した2008年の収穫量の半分、つまり1億3,900万トンにまで膨れ上がってしまう。生産されるエタノールは約150億ガロン、米国の自動車燃料需要の6%を満たす量である。(この予測では、2007年7月1日以降に着工し、2008年の収穫した穀物を使用する工場は、一切考慮していない)。

世界の主要な穀物を燃料生産に転用しようという前例のない動きが、今後いたるところで食糧価格に影響を及ぼすだろう。世界のトウモロコシ価格が上昇すると、消費者が代わりの穀物を買ったり、穀物の作付けをめぐって土地の奪い合いが始まることから、小麦やコメの価格も上昇する。2006年後半、トウモロコシと小麦の先物取引価格は、すでに過去10年の最高値を付けている。

生産高では世界の40%、輸出高にいたっては世界の70%を占める米国のトウモロコシだが、それが今、世界の食糧経済に大きな影を落とそうとしている。米国から輸出されるトウモロコシは年間5,500万トン、これは世界全体の穀物輸出高のほぼ1/4に当たる。トウモロコシの生産量が全米一のアイオワ州だけでも、カナダ一国の生産量を上回っている。しかも、第二位のイリノイ州もアイオワ州をわずかに下回るだけである。この米国からのトウモロコシの輸出が大幅に減少するような事態になると、世界経済全体に衝撃が走るだろう。

アイオワ州立大学のエコノミスト、ロバート・ワイズナー氏の報告によると、2006年末現在、アイオワ州のエタノール工場(稼働中、拡張中、建設中、計画中を含め)のトウモロコシ需要は、全体で27億ブッシェル(トウモロコシの場合1ブッシェルは25.4キログラム)に及ぶという。しかし、豊作の年でも同州の収穫高は22億ブッシェルしかない。エタノール工場と家畜業者とは穀物をめぐって競合関係にあることから、アイオワ州はトウモロコシを輸入せざるを得なくなるかもしれない。

トウモロコシの供給が急速に逼迫すると、価格の上昇は朝食用のシリアルのようにトウモロコシをそのまま使った製品だけにとどまらず、ミルクや卵、チーズ、バター、家禽、豚肉、牛肉、ヨーグルト、アイスクリーム等のトウモロコシを間接的に使う製品にまでも波及する。恐ろしいのは、こうした食糧価格の急激な上昇が、エタノール燃料の製造業界に対する消費者の反発を招きはしないかという
ことである。

エタノール燃料の推進派は、トウモロコシをエタノールの生産に使用しても、食糧経済が完全に打撃を受けるわけではないと主張する。その指摘は確かに正しい。蒸留プラントに投入されたトウモロコシの30%は乾燥穀物として回収されるし、その量は限られてはいるが、肉牛や乳牛、豚、鶏の飼料として利用できるからだ。

推進派の人たちはまた、主に大豆作りを止めてトウモロコシ畑を増やし収穫量を上げれば、米国のエタノール工場に必要なトウモロコシは調達可能だとも主張する。確かにトウモロコシ畑を増やすことはできるだろう。しかしこれまでの経験では、必要な収穫量が得られるという確証はない。

しかも、世界の穀物生産は過去7年の間で6年も消費を下回り、その備蓄高は過去34年間で最低レベルにまで落ち込んでいる。よりにもよってこの時期に、トウモロコシの需要が急激に高まっているのだ。


[5]続きを読む

03月02日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る