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『日々の映像』
by 石田ふたみ
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■レスター・R・ブラウンの論考
あまりにも多くの蒸留所が建設される中、家畜生産者や養鶏業者は、肉や牛乳、卵の生産に必要なトウモロコシが不足するのではないかと心配している。また、米国は世界のトウモロコシ輸出量の7割を供給しているため、トウモロコシ輸入国はその供給量について懸念している。
3.欧州
欧州では、バイオディーゼルの生産が主流である。2005年、欧州連合(EU)のバイオ燃料生産量は約64億リットル。このうち、約34億リットルが植物油を原料とするバイオディーゼル(主要生産国はドイツ・フランス)、約29億リットルが、
主に穀物を原料とするエタノール(主要生産国はフランス、スペイン、ドイツ)である。マーガリン製造業者は、補助金を受けているバイオディーゼル精製所との競合に苦戦を強いられており、欧州議会に対し支援を求めている。
4.アジア
アジアでは、中国とインドでエタノール蒸留所の建設が進められている。2005年、中国はおよそ200万トンの穀物(大部分はトウモロコシだが一部小麦やコメも使用)をエタノールに転換した。インドのエタノール生産の主原料はサトウキビが
大半を占めるが、タイではキャッサバが中心。また、マレーシアとインドネシアでは、パーム油プランテーションの増設やバイオディーゼル精製所の建設に多額の資金を投じている。マレーシア政府は、昨年あたりから32のバイオディーゼル
精製所を承認しているが、このところ追加の承認を保留し、パーム油の供給量が適切かどうかの評価を行っている。
●穀物争奪戦がもたらすもの
農産物を由来とする燃料生産の収益性は、とてつもなく大きな投資を生み出してきた。1ガロン(約4リットル)51セントの米国のエタノール補助金が2010年まで続き、原油価格が1バレル(約159リットル)70ドルで推移した場合、トウモロコシからアルコール燃料を蒸留することは、この先何年もの間、巨額な利益を約束する。
米国のバイオ燃料生産への投資は、急騰する原油価格への対応策として行われている。しかしそれは今や手が付けられないほどに拡大し、肉類や牛乳、卵の生産から穀物を奪う恐れが出ている。そして、何にもまして重大なことは、莫大な数の蒸留所によって、人間が直接消費できる穀物が減ってしまう危険性が増すとい
うことだ。
穀物由来の燃料に対する需要は、うなぎのぼりに増えている。世界の穀物備蓄量が過去34年間で最低水準にあり、かつ毎年7,600万人が生まれているこのときに、である。言ってみれば、世界8億人の裕福な自動車所有者と食糧の消費者とが、
真っ向から対立する局面へと向かっている。自動車が絶えず燃料を必要とすることを考えれば、穀物価格の上昇は避けられないであろう。
唯一わからないのは「いつ、どの程度、食糧価格が上昇するか」だ。実際、ここ数カ月間で小麦とトウモロコシの価格は20%上昇している。世界で最も貧しい20億の人々。彼らの多くは所得の半分以上を食べ物に費やす。そんな彼らにとって、穀物価格の上昇はすぐさま、生きるか死ぬかの問題になり得る。食糧価格が上昇すると、インドネシアやエジプト、ナイジェリア、メキシコなどの低所得の穀物輸入国で飢餓がまん延し、政情不安が広がる危険性が高まる。そしてこの不安定さは、世界全体の経済発展の崩壊へとつながる恐れがある。
エタノール蒸留所での穀物需要が爆発的な増加を続け、穀物価格が危険水域まで上昇すれば、米国政府は、裕福な自動車所有者と低所得消費者との間で繰り広げられる、食糧をめぐる世界的な対立に介入せざるを得なくなるかもしれない。
●争奪戦回避の選択肢
農産物に由来する燃料を利用する以外に、いくつかの選択肢がある。例えば、自動車の燃費基準を20%引き上げる。これだけで、自動車燃料へのエタノール供給で得られる3%相当の利益を、繰り返ししかも何分の1かのコストで上げることができる。また、公共交通機関に資金を投じれば、車への依存度を全体的に下げ
ることも可能だ。
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02月27日(火)
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