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13匹目のバナナフィッシュ
by サキ
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■青い空の下
白昼のビル街で、無意味に携帯電話を弄っている。
ここは車通りが激しい一方で、この時間はほとんど、人通りはない。
まったく、こんな場所でこんな時間に待ちあわせしようなんて、キチガイ沙汰だ。
ここで待ちあわせしようと言い出したのは彼の方だ。
「止めてくれよ。あんなところ。
眩しすぎて、あんたが来たことすらわからないじゃないか」
ぼくが反論すると、意味ありげに笑った。
もっともこれは、彼の癖で、特に何の考えもないのを、知っている。
「ぼかぁね、あの空が好きなんだ」
彼の指す空は、決して頭上に広がるあれじゃない。
「都会の空の青さなんて、たかが知れてるじゃないか」
「ぼくは別に、頭上に四角く切り取られた都会のあの空だって、嫌いじゃないがね」
反抗的な態度をとったのは、待ちあわせ場所が気にいらなかったからだ。
彼はふふんと鼻を鳴らして、ぼくの言葉を流した。
「眩しいと君は言うがね、眩しすぎて見えないくらいが、本当の青空だと思うよ」
知ったことか。
大体、本当の、って意味わかって言ってんのか。
心の中で悪態を吐いたが、何を言っても無駄だということは、百も承知だ。
「あの空は美しい」
まるで目の前にそれが広がっているように、恍惚として、彼は呟いた。
それきり、ぼくが何も言わないのをいいことに、彼は時間を指定して、せっかちに電話を切った。
いつもこうだ。
惚れた弱みとでもいうのか、ぼくは本当に、彼に逆らえたことがない。
携帯の画面に反射する光が眩しくて、目を細めて顔を上げた。
全面ガラス張りのビルに、青空が映って、そこだけ妙に、底抜けに、明るかった。
01月06日(火)
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