ID:19318
13匹目のバナナフィッシュ
by サキ
[35042hit]

■縮緬金魚。
 風が吹いて、彼の赤い髪がさわさわと揺れた。黒いワンピースのような、着物のような服の裾が捲れ、赤い縮緬が覗いた。
「なぜ今更と、思うだろ。なぜだろう。狂ったかもしれない」
 彼はくっくっと嗤った。僕もつられて笑おうとした。が、そのときにはすでに彼の嗤いは止んでいた。嘘だよ、と彼は言った。
「駅の窓口の前にでかい水槽があった」
 僕は初めて口を挟んだ。
「池とか、湖とか、海とか、そういうのがないところに引っ越したつもりだったのに、な」
 そして、あの子は今頃本当だったら高校生の女の子になっていたんだと、僕はさっきの少女を思い出して考えた。彼女が高校生になったら、どんな娘になったろう。
「会ったよ」
「なにが、在った?」
「いや……お前に似合いそうなカンザシがさ、あったから」
 言ったところでどうなるというんだ。白日夢のような気もする。
「また、引っ越すわ。今度こそ、住所教えてく。もう蒸発したりしねーから」
 数ヶ月前突然街から消えた友達は、そう言って歩き出していた。

11月11日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る