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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■一人ひとりの自由な解釈
最近は「心の家路」を更新する時間もあまり取れず、更新したとしてもwikiの方ばっかりでした。おかげで、この「日々雑記」は何ヶ月も更新されないままになっていました。ほったらかしにするのも良くないのでは、というご意見もいただきましたので、これからは月に何回かの更新を心がけたいと思います。

さて、AAプログラムをどのように解釈しようと、その人の自由である、とビル・Wは述べています。ここで、AAプログラムとは、たいていは「12のステップ」のことを指しているわけですが、当然同じことは12の伝統や、12の概念にも当てはまります(ただしその話は後回しにしましょう)。

ステップ4・5の棚卸しのやり方を取り上げてみても、たくさんの種類のやり方があります。どのやり方が正しく、どのやり方が間違っている・・と言うことはできません。

あえて言えば、人間は、自分に役に立ったやり方が「良いやり方だ」と評価する傾向があります。先日、AAのラウンドアップに参加しましたが、招かれた医師がこんな話をしていました。

「アルコール依存症の人で、私の病院を良い病院だと言ってくれる人がいる。それは、その人がこの病院に入院したことが、酒をやめるきっかけになったから、そう評価してくれるわけで、きっかけにならなかった人たちは違った評価をするだろう」

自分に利があるものを良しとする・・人は実にシンプルな評価基準を持っています。同じことは12ステップについても言えるでしょう。12ステップにいろいろな解釈があるなかで、自分を回復させてくれたやり方が「良いやり方」だと人は評価するでしょう。

試したやり方が一つだけの人は、そのやり方がベストだと言うでしょう。いくつか違ったやり方を試した人は、その中からどれかをベストに選ぶでしょう。人によってベストが違っている。だから、ステップをどのように解釈しても良いという自由がAAにはあるのでしょう。

僕はビッグブックをベースにしたやり方を自分で試し、人に勧めてもいるわけですが、それは僕がそれがベストだと信じているがゆえです。しかし、その気持ちが行き過ぎて、「このやり方が、他のどんなやり方よりも優れている」などと言いだしたとしたら、それは傲慢の極みでしょう。別の解釈があり得るということも認めなければなりませんし、時には積極的に今まで自分が試していなかった考えを取り入れ、いままでの自分の考えを否定していくことをしないと進歩がありません。

AAのプログラムは自由に解釈して良い・・同時に、自分の選んだ解釈が自分に回復をもたらすかどうか、それも自分の責任です。自分の選んだ解釈で回復できなかったとしても、それはその人の責任に帰されることになるでしょう。

では、12の伝統はどうか? こちらも12のステップと同じように、一人ひとりが自由に解釈することになります。12の伝統についても、ある一つの解釈を人に押しつけ、他の考え方を否定するようなことをすれば、それは傲慢の極みです。

しかし、12の伝統は、一人のAAメンバーはもちろんのこと、集団に対して使われるものでもありますから、人によって解釈が異なって良い、とばかり言っていられません。人によって解釈が違っていては困る場合も出てくるでしょう。皆で共有できる解釈を作らねばなりません。そこでメンバーが集まって民主的に話し合い、決める必要があります。あるグループが決めたことと、別のグループが決めたことが違っている場合もあるでしょう。それで当然ですし、違っていても差し支えなければ、そのままにしておけばよいし、なにかの関係で共有する必要があれば、議論していけばよいでしょう。

AAでは、どんな集団でも、そのメンバーが時間の経過とともに入れ替わっていきます。また、集団を構成するメンバー一人ひとりの考え方も時間とともに変化していきます。だから、伝統の解釈にも変化が生じます。


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10月11日(土)
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