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ひぽこんコラム
by 和田
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■イギリスに行きたし、金はなし〜音遊びの会のこと
 後から聞いたんだけど、翼くんはそれまでずっとお父さん以外の誰ともセッションしたことはないらしい。

 でも、なぜか、そのときは太鼓の前に座るとボンボンたたき出した。「デブのオバちゃん、目、泳いでんぜ! ったくよ。手、かかるぜ」とでも思ってくれたのだろうか。。。。それに合わせて、私は恐る恐る木琴を叩いてみた。

 へ〜〜、木琴て、いい音なんだなぁ〜と、びっくり。

 翼くんはボコボコと太鼓を叩くから、なんとかそれにあわせようと、また、こびる私。ダメだよなぁ。そういうのって見透かされる気がする。

 でも、ふと、翼くんが叩きながら小さな声でモソモソ何か歌ってるのが聞えたから、私も同じくらいモソモソと歌い始めた。

 叩き@太鼓、叩き@木琴、及びモソモソ合唱。

 1分ぐらいそれが続き、バッと翼くんが太鼓を叩いていた棒を投げ捨てて、いきなり終了〜〜〜〜〜。

 ありゃ?

 と思ったが、沼田さんに「よかったですよおお」と言われる。私の前に座っていた、ずっとギターを抱きしめていた、ギター命の少年がニコッと私に笑いかけるから、グーを出して、グーとグーでガキッとした。

 なんか、ちょっと、子どもらと心通じるの巻。。。てへっ。。。なんだか嬉しい。

 その後も延々2時間もセッションが続く。

 でも飽きないんだ、子どもら。いや、飽きたら自由に色んなところで体動かしたり、いろんなことしてる。

 ずっと叫びとおしの子もいるし。

 私もできたら、彼らといっしょに前のほうをぐるぐる歩いて、叫んだり、歌ったり、ウララララ〜〜とかしたかったのだが、できない。

 恥ずかしくて。

 ああ、オレ、ぜんぜん自由じゃないよなぁとか思う。

 子どもらは本当に自由でさ。障碍って何だよ?と思う。オレのが障碍あるんじゃ?って。

 子どもらは、しかしただ自由にやったりしない。私が「子どもにこびて合わせよう」としたのとは違って、音そのものに合わせようとして、どんどんおもちゃ箱みたいな楽器箱を探って音を見つけ出す。で、あ、これは合う音だ、と私も感じた音に出会うと、その音をずっと鳴らしていた。ちゃんと合う音を探し出せるんだ。ありのまま。本能のままで。ミュージシャンじゃ。

 とはいえ、後から話したお父さんお母さん。

 ずっと叫び続けていた女の子、すごくかわいい女の子なんだけど、彼女のおかあさんが「この子を連れて出かけられるところはここしかない」と言っていたのにハッとした。

 そうか。そうだよね。たいへんなんだ。知的障害の子どもたち。

 体調もいつも万全とは限らず、「今日もここに来るまではぐったりしてたんですけど、ここが好きだから、ここに行くよといったら元気になって、今はもうすごい元気です」と言ってた。ここが好きなんだなぁ。。。みんなと会って、自由にやって、たとえ話すことなんてできなくても、愉しいんだ。。。

 しかし。帰り道。困ってしまった。

 それで、私が、イギリスくんだりまで行って、何ができるの?って。イギリスなんて行く必要あるのか?って。

 障碍のある子供たちが演奏しました、チャンチャン♪じゃ、もう、これで十分。800字ぐらいのありきたりの記事を書いて、チャンチャンだ。いいですね。障碍ある子も音楽で楽しめるんです、キラキラみたいな、ウソくさい記事書いてさ。

 ほんとはそんなこと、思っちゃないくせにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!

 なんか、そこから、オレを救ってもらえる、何かを見つけたい〜〜〜〜〜。子どもらにオレを救ってもらいたいいいいいいいいいいいいいいいいいっていう、いつもの、オレ至上主義、オレさまが中心なのに。

 どうしたらいいの?

 その日は、ちょっと前に私にお皿を作ってくれた、大阪南部の陶芸家ちゃんの家に泊めてもらうことになっていたので、延々乗り変える見知らぬ電車、見知らぬ風景の中で悩み続けた。

 そして、結局、相手がスターであれ、コンビニの客であれ、障碍のある子たちであれ、おいらが書けるのは、おいらとその人たちとの関係性。


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06月16日(日)
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