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頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■念力
小学6年生の頃、親戚の家で立てない子犬を飼っていた。
この子犬、先天的に立てないのではなかった。
ある事件以来立てなくなったのだ。
その事件とは、その親犬と兄弟犬が犬さらいにさらわれたのだ。
おそらく立てない犬は、その光景を隠れて見ていたのだろう。
そのためショックで立てなくなったのだ。
ぼくが親戚の家に遊びに行くと、いつもその子犬は段ボールの箱の中でうずくまっていた。
伯母が食事を与えても、少し口を付けて、あとは残してしまう状態だった。
そのため、元々痩せていた体はさらに痩せ細り、ほとんど骨と皮だけになっていた。
親戚の家の誰もがその子犬のことを心配したが、手のつけようがない。
「かわいそうだが、このまま死ぬのを待つしかないなあ」と伯父は言った。
「病気なんかねえ」
「精神的なものだとは思うけど…」
「立ったら治るんかねえ」
「そうやなあ。立ちさえすれば、何とかなるかもしれん」
「ふーん。じゃあ、立たせてみようか?」
そう言って、ぼくはその子犬を抱え、立たせてみた。
しかし、足に力が入らないのか、すぐに倒れてしまう。
ぼくは諦めず、何度か同じことを繰り返した。
すると子犬は、「ウー」と言って怒り出した。
ぼくはその子犬の頭をひっぱたいた。
「おまえのためにやってやりよるんぞ。偉そうにうなり声なんかあげるな!」
子犬は、その意味が理解できたかのように、黙り込んでしまった。
そんなある日、ぼくは一つの実験をした。
それは念力である。
マジシャンのように手の指に力を入れて子犬の上にかざし、「立て、立て」と言って念を送った。
最初子犬は、ぼくのそんな行為を無視していた。
しかし、ぼくは諦めずにずっと念を送ったのだった。
ぼくが念を送り始めて、10分ほど経った頃だった。
突然子犬の体が、電気が走ったようにピクッと動いたのだ。
「もしかしたら…」
そう思ってぼくは、さらに強い念を送った。
「立ち上がれ、立ち上がれ」
すると子犬の体は、微かだが動き出したのだ。
さらに続けていると、その動きはだんだん力強くなり、体全体にエネルギーがみなぎっているようだった。
その後、子犬は足に力を入れだした。
自分の意思で立とうとしているように、ぼくには見えた。
そして何度も何度もよろけながらも、子犬は立ち上がろうと試みた。
そして、何度か目の挑戦で、ついに子犬は立ち上がったのだ。
「立った!子犬が立った」
まるでアルプスの少女ハイジでクララが経った時ように、ぼくははしゃぎまわったのだった。
ぼくはおよそ半年ぶりに、その子犬が立つのを見たのだった。
それ以降子犬は、段ボール生活をしなくなった。
長い間寝たっきりだったので、動きはぎこちなかったが、それでも立って歩き回るようになったのだった。
しかし、相変わらず、食べることはあまりしなかった。
そのため、骨と皮だけの体のままだった。
そして、それが致命傷になった。
子犬は、その後1年足らずで死んでしまったのだ。
死んでから思ったのだが、子犬に念を送って、食べるようにすればよかった。
しかし、犬が立ち上がってからのぼくは、念力のことをすっかり忘れていた。
念力の実験ということでやったことだが、立ち上がった時に「これは偶然だ」と思ったためだ。
「そういえば、あの時念力で子犬を立たせたんだ」と思うようになったのは、ごく最近のことだった。
もしあの時に念力を鍛えていたとしたら、もっと違った人生を歩んでいたに違いない。
少なくとも、肩や腰の痛みくらいは自分で治せるようになっていたことだろう。
そう思ったぼくは、あの時やったことを思い出しながら、肩や腰に念を送ってみた。
しかし、すでにその能力は失われていたのだった。
05月25日(水)
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