ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■上京前夜(19)
その年の9月のことだった。
ぼくは8月中旬に一端長崎屋を辞め、その時期は博多の出版社で働いていた。
仕事から戻ると、母が「さっきUさんという人から電話があったよ」と言う。
「何の用やった?」
「さあ?何も言わんかったけど、急いどるみたいやったよ。電話してみたら?」
「うん。わかった」
ぼくはさっそくUさんに電話をかけた。
「もしもし、しんたですけど」
「ああ…、しんた君」
Uさんの声は沈んでいた。
「どうしたんですか?」
「あのう…、Kさんが…」
「えっ?」
「Kさんが死んだんよ」
「えーっ!?うそやろ?」
「さっき、Oさんから電話があってね…」
「何でまた…。事故か何かで?」
「いや、ガンらしいよ」
「えっ、ガン?どこの?」
「胃ガンらしいんよ」
「ああ…」
ぼくには思い当たる節があった。
Kさんはめっぽう酒の強い人だった。
バイトしていた時に、「昨日はボトル2本空けた」などとケロッとした顔をして言っていた。
普通ボトル2本も空ければ、そんなケロッとした顔をして会社になんか来られないはずである。
聞くところによると、飲み比べをして、一度も負けたことがないらしい。
それもそのはずだった。
Kさんは酔えない体質の人だったのだ。
そのため、限度がわからずに、時間が許す限り飲んでしまう。
社会に出て、いろいろとストレスを溜めては酒を飲む、といった生活をしていたのだろう。
それで胃を痛めたのだろう。
Uさんの話によると、最後の一ヶ月は食事も受け付けない状態で、死ぬ前はかなりやせ細っていたと言う。
Uさんは続けた。
「今日通夜で、明日葬儀なんやけど。今日はもう遅いけだめやけど、しんた君、明日は行ける?」
ぼくは、翌日から熊本に出張しなければならなかった。
「行きたいけど、明日から出張なんよ」
「ああ、出張か。じゃあ、行けんねえ…。しかたない、Yさんと二人で行ってくる」
「Oさんは?」
「付きっきりやったみたい」
「そう…」
「かなり落ち込んでいるみたいよ」
「そうやろうねえ」
Kさんの家は、博多に行く途中にあった。
いつも電車でそこを通る時、Kさんの家の屋根が見えていた。
翌日、出勤途中に、電車がKさんの家の前を通過した時に、ぼくはKさんの家の方向を向き手を合わせた。
そして、博多に着くまで、あのY運送でバイトした日のことを思い起こしていた。
Y運送に入った日のこと、井筒屋での仕事のこと、Y大生事件のこと、Kさんの家に泊まった日のこと、X子のこと、Oさんのこと、K選手の壮行会のこと、成人の日のこと…。
そういう出来事も、その時にはすでに遠い過去のことになってしまっていた。
だが、Kさんは違っていた。
兄貴という形で、ぼくの中にはっきりと存在していた。
そして、それは今でもそうである。
01月26日(水)
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