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頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■山嵐(4)
道場に入門してから、2ヶ月近くたった。
あいかわらずぼくは、Kさん相手に『ひざ車』をやっていた。
そんな時、一人の男の人がやってきた。
歳はKさんと同じくらいだ。
ぼくは「この人は金曜日の人か?」と思ったが、違っていた。
新しく入門した人で、Kさんの友人らしい。
おそらくKさんも、ぼくの『ひざ車』に飽きたのだろう。
それで友人を呼んだのだ。

水曜チームは3人になった。
が、他の二人は経験者。
年が離れていて、しかも初心者であるぼくは継子扱いだった。
面白くない。
二人は試合形式で柔道をやっているのに、ぼくは柱を相手に『ひざ車』である。
いったい、いつになったら他の技を教えてくれるのだろう。
思いあまって、ぼくは先生に訴えた。
「先生、他の技も教えてください」
「『ひざ車』一つ満足に出来んのに、何が他の技だ」
そう言われると返す言葉がない。
仕方なく、柱相手に『ひざ車』の練習をやった。

その年の年末だった。
あいかわらず柱相手に『ひざ車』をやっているぼくを見て、先生が言った。
「おまえはいつまで『ひざ車』をやっとるんか?」
「え?だって、先生が他の技を教えてくれないじゃないですか」
「Kたちの練習を見て、自分で技を盗んでいかな」
「どうやって盗むんですか?」
「どういう動きの時に、どういう技をかけるとかをちゃんと見とかな」
「柱で練習している時にですか?」
「・・・。ちょっと待て」、そう言って先生はKさんを呼んだ。

「K、しんたに背負い投げを教えてやれ」
「背負いですか?大丈夫ですか?」
「しんたは小さいから、足技よりもそういう技の方がいい」
ということで、ぼくはKさんから背負い投げを教えてもらうことになった。

「しんた、いいか。こちらがこうして、相手がこう動いた時に相手に飛び込むんぞ」
Kさんは背負い投げのタイミングを教えてくれた。
が、そのタイミングが実に難しい。
しかも、この技は足腰が強靱でなければ出来ない。
その肝心の足腰が、ぼくは弱かった。
すぐに相手に潰されるのだ。
練習では相手が飛んでくれるけど、もしこれで試合になったら、到底出来ないだろう。
そう思ったぼくは、先生に言った。
「先生、ぼくには背負い投げは出来ません。他の技を教えてください」
「バカか、おまえは。背負い投げが出来んのに、他の技が出来るわけないやないか」

と言っているところにKさんが口を挟んだ。
「先生、しんたには背負い投げは合ってないですよ。足腰弱いし」
「そうか。それならどんな技ならいいか?」
「うーん…」
結局答えは出てこなかった。
「しかたない。最初に戻って、型を一通り教えることにするか」
ということで、ぼくはまた『ひざ車』から始めることになった。
09月03日(金)
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