ID:1488
頑張る40代!plus
by しろげしんた
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■珍客(その2)
会社に行ってからのこと。
荷出しをしている時だった。
「ちょっといい?」
という声がかかった。
お客さんだった。
「どうしたんですか?」
「いやね、今15センチくらいのムカデを見たんよ」
「どこで?」
「そこで」
と、お客さんは隣の売場を指さした。
ぼくはそこまで見に行った。
「このへんにいたんですか?」
「ああ、その隅からヒョコッと出てきた」
「そうですか」
「どうしてこんなところにムカデがおるんかなあ?」
「ムカデだけじゃないですよ。蛇もいるしイタチもいる。山ネズミさえ出てくるんですから」
「山ネズミ?ここは山じゃないじゃないか」
「いや、ここは山を切り開いた土地なんです。だから、いまだそういう生き物が住んでいるんですよ」
「そうか。まあ、どうでもいいけど、そういうのはちゃんと駆除してくれんと困る。早急にやってくれ」
『早急に』と言われても、相手が姿を見せないことには、こちらも手の打ちようがない。
が、とりあえず「わかりました」と言っておいた。

それから30分ほどたった時だった。
うちのパートさんが「しんたさーん」と呼んだ。
「どうした?」
「今ですねえ、ムカデがいたんです」
「どこに?」
「このカウンターの下です」
「えっ!?」
「もうすぐ出てきますよ」
「何か叩く物はないんか?」
ゴキブリの時と同じで、とっさの時に何も見あたらない。
仕方なく、カタログを置いてあるところに行き、そこにあったカタログを手にとった。
その時、「出てきましたよー」という声がしたので、慌ててカウンターに戻った。

体長15センチほどのムカデがそこにいた。
おそらく、先ほどお客さんが言っていたムカデだろう。
ぼくは手に持っているカタログを丸め、2,3発叩いた。
カタログは、ゴキブリを叩いた時のチラシよりは厚みがあった。
が、ムカデは堅いので、2,3発では死なない。
身をよじらせてもだえている。
そこでもう一撃を喰らわせた。
動きが止まった。
そこで、ぼくはそこにあったチリトリにムカデをすくい入れ、朝のゴキブリ同様トイレに行き、便器の中にムカデを放り込み、水を流した。
息を吹き返したムカデは、水の中でもがきながら、便器の中に吸い込まれていった。
「南無阿弥陀仏」
これで終わりである。

『ちっ、また殺生してしまったわい』
朝、殺生はこれで終わると思っていた。
が、続く時は続くものである。
08月19日(木)
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